生物系特定産業技術研究支援センター

新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業

2002年度 中間評価結果

マメ科植物等のゲノム分析による根粒形成機構の系統的解明

((独)農業生物資源研究所 川崎信二)    

評価結果の概要

全体評価

本研究は、ミヤコグサ、ダイズ等のマメ科植物と根粒菌についてゲノムの構造と機能の解析により、それぞれの根粒形成及び共生窒素固定に関連した遺伝子群を系統的に単離し、それらの機能を体系的に解明することを目的としている。
提案時の研究計画から若干の遅れ、変更がみられるものの、全体的にはほぼ良好な進捗状況である。これまでは、ゲノムの基盤整備といった地味な研究が重点的に行われてきたが、重要な成果が着実に得られつつある。注目すべき成果として他の研究グル-プと共同で行った根粒超着生変異遺伝子の特定が挙げられる。
国内外の他の研究グル-プも類似の研究を進めており、今後「根粒形成機構の系統的解明」という本研究の独自性を示す最終的目標が達成できるような研究戦略の組立てが必要である。

中課題別評価

(1)「ミヤコグサのゲノム解析を基にした根粒形成遺伝子群の系統 的単離と機能解析」
((独)農業生物資源研究所 川崎信二)    

本中課題では、ミヤコグサのゲノムライブラリ-の整列化技術の開発と変異体の変異遺伝子の単離を行っている。ゲノムの整列化を行うための極めて高度なシステムを開発しており、これが完成すればその意義・波及効果は非常に高いと考えられる。
根粒形成に関与する遺伝子(LjSym 70,72)はいずれもセントロメア近傍に存在するため、まだ遺伝子の単離には到っていないが、従来にない極めて精密なマップが作製されており、早急な遺伝子の単離が望まれる。今後、本プロジェクトのユニ-クさを打出すために、LjSym遺伝子以外の遺伝子の単離にも取組む必要があると思われる。

(2)「ミヤコグサとダイズのシンテニ-を利用した遺伝子単離システムの開発」
(千葉大学園芸学部 原田久也)    

本中課題では、ミヤコグサとダイズのシンテニ-解析により、ダイズの重要遺伝子をミヤコグサのゲノム情報から単離するシステムの構築を目指している。ミヤコグサとダイズの詳細な連鎖地図を作製し、シンテニ-解析によりダイズの根粒超着生変位遺伝子Nts-1の単離に成功する等、着実な成果が得られており、ほぼ順調な進行状況と考えられる。遺伝子探索の研究に関しては、中課題(1)との関連が強いので、今後は、(1)との連携をさらに強め、効率的な研究の組立てを行う必要がある。

(3)「根粒菌ゲノムの機能分析による共生窒素固定遺伝子群の系統的単離」
(大阪大学大学院理学研究科 佐伯和彦)    

本中課題では、ミヤコグサの根粒菌について、ア)種々の遺伝子を欠損させた体系的な変異体群を作製し、根粒菌側の遺伝子の機能を系統的に解明するとともに、イ)野外で使用可能なゲノム改変根粒菌作成技術を開発することを目指している。
ミヤコグサ根粒菌の全ゲノムの99.7%をカバ-するコスミドライブラリ-の作製、根粒菌のゲノム破壊株作製のプロトコ-ル開発等、基盤的な整備ができた段階である。現時点では、新たな遺伝子の特定はできておらず、進行状況はやや遅れていると判断される。今後は、イ)ゲノム改変根粒菌作成技術の開発の課題を中止し、ア)の破壊株の作製を集中的に進め、最終的な目標である「共生窒素固定遺伝子の包括的同定」の達成を目指した取組が必要である。