生物系特定産業技術研究支援センター

新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業

2003年度 中間評価結果

非メチオニン型翻訳開始機構の解析とその利用法の開発

((独)農業生物資源研究所 中島 信彦)

評価結果概要

本研究の目的は、チャバネアオカメムシ腸管ウイルス(PSIV)ゲノムの、遺伝子間領域に存在するリボソーム内部進入部位(IGR-IRES)を介した翻訳開始機構の解明を通じて、任意のアミノ酸からのタンパク質合成開始を可能とし、一般に利用可能な技術とすることである。本研究は課題1~4からなり、それぞれ以下の成果を得た。
1IGR-IRESの高次構造の解析:IGR-IRESの高次構造を解明し、40Sリボソームが結合するIGR-IRES上の部位を同定した。2タンパク性結合因子の解析:タンパク性結合因子の存在は確認出来ず、PSIV類似のウイルスを用いた実験で伸長因子のみで蛋白合成が起きることを示す論文が発表されたので、14年度で中止とした。3非メチオニン型翻訳開始例の探索:高等動物を含む各種塩基配列データベースを対象に検索を行った結果、IGR-IRES構造はPSIV型遺伝子構造を持つウイルスに特異的であることが判明したので、15年度で中止とした。4IRG-IRES利用法の開発:in vitroでの、メチオニン以外のアミノ酸から始まるタンパク質の生産は、コード領域の構造に非依存的に行われること及びコード領域先頭部分のGC含量を低下させると翻訳効率が向上することを明らかにした。
課題2と3を中止としたことは、妥当な判断と言える。課題1と4で得られた成果は高く評価できる。本研究はオリジナリテイーが高く、継続推進する価値を有する。