生物系特定産業技術研究支援センター

新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業

2004年度 中間評価結果

耐病性植物育種の分子基盤研究

(独立行政法人 農業生物資源研究所 大橋 祐子)

評価結果概要

本研究は、耐病性植物育種を目指し、病原体感染や傷害に対する抵抗性機構を双子葉植物のタバコと単子葉植物のイネを用いて解析することを目的としている。研究内容は、3つのサブグループにより、病原体感染による細胞死の機構、感染によって誘導される抵抗性獲得機構、防御シグナル物質や抵抗性関連遺伝子の単離と特性について、分子レベルで解析した。現時点での主な成果として、カルモジュリン、受容体型プロテインキナーゼ、熱ショックタンパク質90、ペルオキシダーゼN1などに進展が見られた。また、傷害誘導性プロテインキナーゼWIPKを活性化する新規ラブダン型ジテルペンWAF-1を単離し、その誘導体di-Me-WAF1が安定で活性を有することを発見した。発見されたこれらの分子や新しい事実は科学的な価値も高く、評価されるものであり、研究は順調に進捗していると判断される。インパクトファクターの高い国際誌に発表されうるいくつかの業績も挙げており、国内・国外の学会等での招待講演も多く、過敏感反応誘導の分子機構解明において優れた業績を挙げつつあると思われる。
一方、本研究の中で多くの細部研究プロジェクトが同時並行で走っており、それらがそれぞれに独自の方針で行われている傾向が見受けられ、これらは今後に検討を要すべき課題となっている。研究代表者がリーダーシップを発揮し、研究課題の達成に向けて集中した取り組みをすることにより、さらなる成果が期待される。