生物系特定産業技術研究支援センター

新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業

2004年度 中間評価結果

家禽の光周性と排卵・放卵周期の分子機構の解明

(名古屋大学大学院生命農学研究科 吉村 崇)

評価結果概要

時計遺伝子の発現、あるいはそれらの機能に関する知見をベースとして展開してきた光周性、あるいは排卵・放卵機構メカニズムの解析は、その成果が世界的な一流学術雑誌に掲載される(7編)など、初期の目的をむしろ越える形で展開している。長年研究者の謎であった問題に対して、短期間に一定の解決を与えることができたのは、従来の知見を十分取り込み、さらに加えて分子生物学的技術を広範に、かつ適切に活用することができた結果である。
光周性については、Dio2(甲状腺ホルモン脱ヨウ素酵素)遺伝子が中心的な役割を果たしていることを明らかにしているが、今後さらにこのDio2遺伝子が生体内でどのような発現制御を受けているかを明らかにする必要がある。排卵・放卵周期については、卵巣で発現し、排卵を制御している遺伝子を明らかにしているが、排卵周期のメカニズムは非常に複雑であり、卵巣に排卵時計が存在しているという仮説は魅力的ではあっても、今後さらにデータを積み重ね、視床下部-下垂体系と卵巣との相互作用の関係を解明する必要がある。
遺伝子導入動物の作製については、社会的アクセプタンスの問題や鳥類個体への外来遺伝子導入に際しての技術的問題を抱えている。しかし、この研究グループは家禽におけるDio2遺伝子などの当該遺伝子の性質と機能を最も深く理解しているグループであること思われる。当該遺伝子に対して深い洞察が加わらない限り、実用性を持った遺伝子導入動物の作出が不可能であり、この研究グループこそがこの困難が予想される課題にチャレンジして欲しい。