生物系特定産業技術研究支援センター

新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業

2005年度 中間評価結果

香りセンサーとしての嗅覚受容体の分子認識機構の解明

(東京大学大学院新領域創成科学研究科 東原 和成)

評価結果概要

本研究の目的は、嗅覚受容体の匂い分子認識空間を立体構造的に分子レベルで解析し、匂い同士の相互作用を、末梢嗅神経に発現する嗅覚受容体レベルから高次脳認知レベルまで多角的に解析して、匂い混合臭の認識メカニズムを明らかにすることである。研究内容は、(1)嗅覚受容体の構造と機能の解明、(2)嗅覚受容体のアンタゴニストの同定と生理的意義の解明、(3)迅速簡便な匂いアッセイ系確立と悪臭受容体のアンタゴニズム解析、の3項目について検討した。研究は、全体として、これらの研究項目に沿って順調に進捗しており、嗅覚受容体の構造解析に関して一部遅れが認められるものの、目標は着実に達成しつつある。特に、当初の目標であるマウス嗅覚受容体の構造と匂い結合部位の同定、匂い分子間の嗅覚受容体レベルでの応答阻害機構の解明を早期に達成したことは高く評価される。研究の展開過程で追加した研究の成果として、カイコガの嗅覚受容体の同定と受容機構の解明、雄のマウスの涙腺から分泌される新規ペプチド性フェロモンの同定、マウス精子嗅覚受容体の機能解明、マウス嗅球糸球体における匂い応答阻害の同定などがあり、嗅覚受容の分子機構の理解を深化させた。これらの成果は、NatureやScienceなど国際的に評価されている学術誌や一般科学雑誌に原著論文や総説として多数発表し、また国内外の学会で多くの口頭発表を行い、座長を務めるなど積極的に情報発信に努めている。研究代表者としてのリーダーシップと指導性も十分に発揮し、効率的に研究を実施している。
なお、上述のように当初全体計画には無い追加の研究部分でも多大な成果を挙げており、これらが最終目標達成に大きく関連づけられることから、必要があれば研究項目の変更や小項目の追加を行って、効率的な研究体制を構築し研究をより一層発展させるように、全体計画を見直すことが望ましい。