生物系特定産業技術研究支援センター

新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業

2005年度 中間評価結果

生物機能の解明と活用のための糖鎖自動合成技術及び規則的な糖鎖ライブラリー合成技術の確立

((独)食品総合研究所 今場 司朗)

■評価結果概要

糖鎖は多種多様で複雑な構造を有し、またタンパク質のように遺伝子情報により直接創り出せる産物ではない。従って、糖鎖を自在に合成することが出来れば生命現象の根幹に関わる糖鎖機能解明研究に多大な貢献が期待できる。このため糖鎖自動合成機の開発は次世代の糖鎖工学分野の重要課題と位置づけられ、世界的に見てもその開発に期待がかけられている。
基本的な技術は、Meldalらが提案したuni-chemo protection (UCP)法を糖鎖合成に応用したもので、溶液法による保護単糖ユニットの効率的大量合成技術、固相法による糖鎖自動合成ならびにライブラリー合成技術から構成される。研究代表者らは、新しいグリシン誘導体をUCP保護基として用いることにより、各種のグリコシル化糖供与体の開発に成功し、その化学的安定性、選択的保護・脱保護、グリコシル化条件の詳細な検討を行っている。課題推進上重要な問題点として、UCP保護基の転移が発生したが、種々の検討を行って転移しない手法を開発した。また、固相樹脂上でのグリコシド反応においても様々な条件を検討し、最も効率的な縮合条件を見出した。一方、HMBA-AM resin及びArgoPore-OH resinを固相樹脂としてライブラリー合成ならびに自動合成に挑戦し、その有用性と問題点を検証するとともに、新規リンカーの開発、各種のレジンテストとキャッピング法の確立、DDQによるリンカーからの切り出し、さらには、酸性イオン交換樹脂による標的糖鎖の選択的釣り上げ法の導入など、各操作の基礎実験に成功した。
全体的に見て、本課題は当初目標としてきた計画をほぼ達成してきている。研究全体は緻密で合成手法における方法論に新規性も含まれており、先端を行く糖鎖工学研究に相応しい内容となっている。目標の糖鎖自動合成機に関しては、モデル化合物として分岐六糖の全合成を行い、ほぼその技術基盤を確立してきている。しかし、現状に甘んずることなく具体的に産業化に向け企業等に本技術を移転できるよう一層の取り組みが必要である。また規則的な糖鎖ライブラリー合成技術開発において、ガラクトースユニット間の縮合反応に際し、当初の予定より時間を費やしたものの新しい転移を抑えるだるま落とし保護手順の方法を確立した。この成果が本研究推進のブレークスルーとなったことは評価に値する。全体の研究成果が特許出願へ向けてあと一歩のところまで来ている。