生物系特定産業技術研究支援センター

新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業

2006年度 中間評価結果

動物ゲノム情報の多面展開を目指したDNAメチル化プロフィール解析

(東京大学 塩田 邦郎)

評価結果概要

本研究を概観すると、十分に信頼性が高く、技術的に他の追随を容易には許さないメチル化DNAパターン解析法に立脚して着実に研究を進められ、優れた成果が期待できる研究である。 例えば、RLGS法で目標数以上のT-DMRが同定され、それらのメチル化プロファイルが個体の細胞系譜や核移植クローンのドナー核との類似性を示す等、価値の高い発見があった。また、アンチセンスRNAによるメチル化制御、抗メチル化二本鎖DNA抗体、初期胚でのダイナミックなメチル化変動はインパクトのある成果に発展する可能性があり、研究技術の革新に十分意を用いて進めていることから、世界的なレベルから見て優れた成果が期待できると考えられる。
生物系特定産業への寄与については、脂肪細胞分化、腸内細菌と腸上皮、クローン動物、ES細胞、核移植胚等のメチル化の解析は産業化への可能性を秘めている。しかし、網羅的解析という手法自体に内在する問題かも知れないが、全般的に広く浅くという観も否めず、今後はむしろ科学的により深い掘り下げを期待したい。また、当初活用していたRLGS法がやや時代遅れとなりつつあり、これを補うためマイクロアレイ解析を意識して抗メチル化二本鎖DNA抗体を開発した点は優れている。これが実用化に耐えるかどうか検討し方法論の統一を図ることが、当初計画であるデータベース構築と核移植胚・細胞・個体の評価系の確立を達成するために有用であろう。メチル化の制御の観点からも、エピジェネティクスの分子機構の観点からも重要な側面である。
本研究が取り上げているトピックスは、学問的に興味がある課題であることに間違いなく、現在の研究の進捗状況が維持できれば、優れた研究成果が学術論文などを通じて発信できるものと思われる。さらに、応用展開研究の展開を例示的に提示しているのが、発生工学、移植医療などにとって、「エピジェネティックス観点からの以上を排除し、生存、あるいは生着率を向上させる」など、「新技術・新分野創出のための基礎研究事業」としてふさわしい側面もまた追求しており、これら分野の研究者の注目を惹くことにより、トータルとして優れた成果が期待できるであろう。