生物系特定産業技術研究支援センター

新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業

2006年度 中間評価結果

微生物を用いたペプチドの大量生産法の開発

(北海道大学 相沢 智康)

評価結果概要

本課題は、有用ペプチド・タンパク質として抗菌ペプチドの生産を、微生物を利用した効率の良い新規タグ分子(キャリアタンパク質)の開発により達成することを目的とする。研究代表者の専門分野であるタンパク質科学・構造生物学的な視点から開発を進めている。
これまで、大腸菌を生産宿主とし、ターゲットペプチドを抗菌ペプチドとして使用可能なタグ分子を好熱菌に由来するタンパク質を検討した。しかし、毒性を回避できないなどの問題が生じたため、試行錯誤の中からタグ分子としていくつかのタンパク質を使用し、それらで数十mg/L程度の生産を可能とした。また、短い抗菌ペプチドを融合しても凝集し難い物性が保持されるタグ分子を見出した点でも評価できる。一方、その他の抗菌ペプチドについて共発現を試みたところ、発現量の増加に成功したので、この成果を特許として出願した。また、酵母宿主を用いた生産系の可能性を予備実験で見出している。しかし、これまでの結果は、まだ農林水産業や食品というものを実用の対象として考えると十分とは言えない。今後に残された問題はまだ大きいが中間評価までの当初目標については一応達成されたと評価できる。
今後は、現実的な方策として最適プロモーターの使用などで大腸菌の高密度培養により菌体量を稼ぐこと、更に菌体の破砕の仕方、破砕菌体からの不溶性顆粒の調製法の改良などで、ペプチドの化学合成を凌駕するような生産系であることの利点を証明することが重要である。また、構造生物学的研究を生かした」タグ分子の開発を行うことで新しい道が開けるかもしれない。一方、メタノール資化酵母などによる酵母を用いた系での各種ペプチドの大量生産の可能性も示唆する発見もあることから、酵母による生産系も期待される。