生物系特定産業技術研究支援センター

新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業

2007年度 中間評価結果

人工DNA結合タンパク質を用いたウイルス感染耐性植物の創出

(京都大学工学研究科 世良 貴史)

評価結果概要

本課題は、研究代表者が世界に先がけて開発した人工DNA結合タンパク質(AZP)を植物細胞内で発現することにより、世界的に重要な植物病害であるジェミニウイルス科ウイルス、特にトマト黄化葉巻ウイルス(TYLCV)、に耐性を示す組換え植物を作出しようというものである。
すでに研究代表者によってジェミニウイルスの一種BSCTVとシロイヌナズナの系で成功したという論文が発表されていることもあり、大きな期待を集めて開始された。しかしながら、これまでの実績については、投入された研究費と期間に比して研究成果が不充分であると言わざるを得ない。
中間評価時の達成目標として、1)ウイルス複製タンパク質の複製起点への結合を効果的に阻害するAZPの作製、2)プロトプラスト中でのAZPによるウイルス複製の効果的な阻害の実証、の2つをあげて、1)AZPのデザインおよび作製、2)AZPの複製起点への結合能の評価、3)AZPによるウイルス複製タンパク質の複製起点への結合阻害能の評価、4)プロトプラスト中でのAZPによるウイルス複製阻害能の評価を計画した。
大腸菌を宿主に異種タンパク質を調製することは研究とは言えないが、本研究は最初の段階で大きくつまずきタンパク質の調製に時間を浪費した。ウイルス複製を阻害してウイルス耐性の作物を創出する本実験をなかなか開始できない状況だった。既報のアプローチによるAZPのウイルス複製タンパク質結合阻害能を追試したのみで、他のアプローチについては単にAZPを大腸菌で発現させDNA結合能を評価したに過ぎない。またウイルス複製タンパク質についても同様のことが言える。従って、中間評価時点ではAZPすべてがウイルス耐性作物創出に利用できるのか結論されていない。また、植物側からのウイルス耐性植物の創出については研究成果があがっていない。このような状況であるから当然かも知れないが、原著論文が発表されていないし、特許出願もなされていない。
研究推進上の問題として、研究代表者が研究参加者に対して必要な指導力を発揮することを期待する。以上の諸点を勘案すると、残りの2年間の研究期間で当初の目的どおりの成果が達成される可能性は低いと考えざるを得ないことから、研究の継続には、研究計画の大幅な変更が必要である。