生物系特定産業技術研究支援センター

新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業

2009年度 中間評価結果

RNA篩管長距離輸送機構による接ぎ木園芸作物の新規品種改良技術の開発

(弘前大学農学生命科学部 原田 竹雄)

評価結果概要

本研究は果樹や果菜類などの接ぎ木繁殖植物においてRNA篩管長距離輸送の実体を解明し、それを品種改良技術として汎用化しようとするものである。目立った遅れはなく、ほぼ計画通りに遂行されている。これまでの3年間については、タバコやシロイヌナズナのような草本植物のモデル植物を実験に取り入れたことがうまく奏功し、研究期間後半の研究の展開のための基礎が築かれたと評価できる。
基本的には、研究計画に変更の必要はないと考える。しかし、単独の研究機関で内外の競争相手と対抗して行くためには後2年の研究期間を展望した研究の絞込みが必要ではないか。
本来の研究目的はRNAの長距離輸送であるが、現状ではターゲット遺伝子の研究に力が入りすぎているようにも見える。研究期間前半でモデル植物を用いることで基礎実験においてほぼ計画通りの進捗を成し遂げたのに対して、後半では、対象作物としてのリンゴと手法としての接ぎ木技術の2つを軸に実用化を見据え、その方向に沿った実験系をできる限り取り入れた研究を展開することが望まれる。篩管内のmRNAの輸送は、ソース器官からシンク器官へと向かう転流の流れによってなされると考えられるが、台木・接ぎ木系における物質の流れなどが実験においてはあまり考慮されていないように見受けられる。研究の折り返し点にあたって、要となる接ぎ木技術については、果樹や作物の接ぎ木技術の専門家の助言を仰ぐなどして、生理学的な基盤をよく把握して現実性のある実験デザインを工夫して欲しい。
できれば、基礎研究段階を十分に展開深化し、何らかの応用実現例を生むことが望まれる。ウイロイド抵抗性や「接ぎ木雑種品種」育成のような現実的な成果を、接ぎ木を用いて実現できる課題を明確に設定するか、絞って工夫することが望まれる。
さらに、論文発表ならびに特許出願に注力する必要がある。