研究項目及び実施体制(◎は総括研究代表者)
- 発がん抑制成分の高含有カンキツ素材の作出
(◎矢野昌充/農林水産省果樹試験場) - カンキツ由来成分の発がん抑制効力評価と抑制機序の解明
(西野輔翼/京都府立医科大学医学部) - カンキツ由来の発がん抑制成分の生物有機化学的研究
(大東肇/京都大学大学院農学研究科) - 発がん抑制物質の作用機構に関する基礎的研究
(小清水弘一/近畿大学生物理工学部)
研究の目的
多くの疫学研究において、カンキツ類はがん予防効果を示す食品の一つに挙げられている。しかし、どのカンキツ成分が役立っているかは十分解明されていない。カンキツ類から発がん抑制成分を新たに見出し、その学術的評価を確定させる。加えて新たに発見した成分が質、量ともに豊富なカンキツを作出する。この研究を通じてカンキツ類のがん予防食品としての評価を高める。
研究の内容
- 発がん抑制成分の探索:発がんプロモーション、活性酵素・窒素種産生、シクロオキシゲナーゼー2の発現、がん細胞増殖等に対する抑制活を探索の指標とした。
- 動物での効果確認:マウス、ラットを用いる化学発がんの実験系を用いた。
- 作用機構の解析:培養細胞によるモデル実験系、化学発がんの実験系によった。
- ヒトレべルでの効果推定:大腸・肺がんを対象とするケース・コントロール研究。
- 高含有カンキツ素材の作出:果樹試保有の遺伝資源から探索と交雑種の作出を行った。
主要な成果
- カンキツ類に特徴的な成分であるβ一クリプトキサンチン(CRP)、オーラプテン(AUR)、ノビレチン(NOB)に優れた発がん抑制活性があることを世界で初めて明らかにした。
- CRPは合有量・消費量の多さ、ヒトにおける吸収・蓄積パターンの研究結果からウンシュウミカンがもっとも重要な供給源であると結論した。RPの、ヒトにおける効能を実証するために大規模ケース・コントロール研究を大腸、肺を対象として開始し、現在進行中である。
- ユニークな化学構造を有するAURとNOBは多くの発がんモデルで優れた発がん抑制活性を示した。その作用が活性酸素・窒素種産生抑制などの新たな抑制機序で説明できる事を明らかにし、発がん研究の最先端誌Cancer Research,Carcinogenesisなどに発表した。この2成分を取り上げ、国の内外で多くの共同研究に発展させ、がん予防研究の発展に大きく貢献した。
- 新たに発がん抑制活性を発見した3成分について、高含有遺伝資源の探索と3成分含有量の遺仏様式を解明するとともに、多くの高含有カンキツ雑種の作出に成功した。
- 以上の成果は将来、カンキツのがん予防食品としての評価向上に役立つものである。