生物系特定産業技術研究支援センター

新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業

2000年度 研究成果

乾燥・塩ストレス耐性の分子機構の解明と分子育種への応用

研究項目及び実施体制(◎は総括研究代表者)

  • 乾燥・塩ストレス耐性機構の分子生物学的解析と育種への利用
    (◎篠崎和子/農林水産省国際農林水産業研究センター)
  • 乾燥・塩ストレス耐性機構の分子遺伝学的解析
    (篠崎一雄/理化学研究所)

研究の目的

近年土壌の塩類化、砂漠化等地球規模の環境劣化が深刻化している。また、異常気象は世界各地で農業生産に大被害を及ぼしている。しかし、乾燥、塩害等の環境劣化に対する耐性作物の分子育種は、その耐性を獲得するための分子機構が複雑なため、研究開発が遅れている。そこで、植物の持つ乾燥や塩ストレスに対する耐性機構を分子レベルで明らかにして、環境劣悪地に対応できる環境耐性作物の分子育種のための基礎研究を行う。

研究の内容

本研究では分子生物学的、分子遺伝学的に優れた特質を持つモデル実験植物であるシロイヌナズナを中心に、乾燥や塩ストレス耐性に関与する機能遺伝子群とその調節遺伝子群を分子生物学的方法や分子遺伝学的方法を用いて可能な限り単離する。その機能を生化学的手法や分子生物学的解析法やゲノム科学的手法を用いて明らかにする。また、ストレス時に効率良く遺伝子の発現を制御するプロモーターを開発する。さらに、得られた有用遺伝子やプロモーターを組み合わせて植物に導入し、これまで困難とされてきた地球環境劣化に対応できる植物の開発に向けた基礎的研究を行う。

主要な成果

  • モデル実験植物であるアラビドプシス、乾燥耐性なマメ科作物であるカウピー、塩耐性のイネを用いて、乾燥 ・塩耐性の獲得に機能する種々の機能遺伝子やストレスに対する応答機構で働く調節遺伝子を単離してその機能を明らかにした。(Plant Cell10,1391,1998; Plant Cell 11,1743,1998; PNAS 97,11633,2000)
  • 4種の乾燥・塩ストレス誘導性プロモーターや再吸水応答性プロモーターを単離して、そのストレス応答性や再吸水応答性を明らかにした。
  • 乾燥・塩・低温ストレス誘導性遺伝子の発現を制御する転写因子の遺伝子と乾燥・塩ストレス誘導性プロモーターとを組み合わせて植物に導人することにより、高レベルの乾燥・塩・凍結耐性植物の作出に成功した。(Nature Biotechnology 17,287,1999-,Plant Cell in press 2000)
  • 種々の植物で同様な乾燥や塩ストレスに対する耐性機構が機能していることを明らかにした。

研究のイメージ

乾燥・塩ストレス耐性の分子機構の解明と分子育種への応用