生物系特定産業技術研究支援センター

新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業

2000年度 研究成果

生物資源の低投入型生産機械システムに関する基礎研究

研究項目及び実施体制

生物資源の低搬入型生産機械システムに関する基礎研究
(梅田幹雄/京都大学大学院農学研究科)

研究の目的

社会の持続的発展のためには、作物や土壌の特性を考慮した低投入環境保全型農業の実現が必要である。本研究は、土壌条件、生育量、収量等をマップ化して条件に合わせて可変施肥を行い、施肥量削減と収量確保をはかる精密農業と、群管理システムや自律走行車両等の先進的農作業機械システムの組み合わせにより、環境保全型農業生産機械システム技術を確立することを目的とする。

研究の内容

  • 群管理システムを中心とする収穫・運搬システムの研究:作業者の操縦するコンバインを、コンピュータ制御の2台の無人コンバインが追走することにより、1人の作業者が3台のコンバインを操作する群管理システムの開発と、光ファイバジャイロによる慣性航法と画像処理により農道を認識して自律走行する2種類の無人運搬車の開発を行つた。
  • 低投入生産のためのほ場マップの作成に関する研究:イネは収量を最大にする面積当たりの穎花数(もみ数)を有する。穎花数は出穂期の保有窒素量により決定する。精密農業とは、イネの最適窒素量から、穂肥施肥時に既に保有している窒素と施肥後土壌から供給される土壌由来窒素を差し引いた不足分を施用することにより、収量を維持しながら施肥量削減をはかる農法をいう。このためには、土壌由来窒素の基になる土壌の化学特性値、表面の凹凸など土壌条件をマップ化すること、及び収量をマップ化することが基礎となる。本研究で0.5haの水田で土壊と収量マップを作成した。あわせて収量センサーの開発も行った。
  • 生産環境情報に基づく施肥機械システムの研究:基肥と穂肥を0、3、6kg/10a変化させ9通りの組み合わせの区画を3種類作り、近赤外、赤及び緑の反射率を測定し植生指数(NDVI)を求めて、NDVIと保有窒素量の関係を求めた。また、GPSにより位置を認識してコンピュータの指示通り施肥を行う可変量施肥機を開発した。生育量マップと土壌マップから必要な施肥量を算出し、これに基づいて可変量施肥を行い、均一施肥区と可変量施肥区の収量変動の比較を行った。

主要な成果

群管理システムを中心とする収穫・運搬システムの研究では、計画通り2台の無人コンバインが追走して稲を収穫する実験に成功した。無人運搬車では農道での直線走行と交差点での旋回と、障害物の認識に成功した。ほ場マップについては1997年から作成し、最適区画、データ収集法、ジオスタティスティクスによる統計処理等の試行錯誤を経て、1999年には均一施肥した0.5haの完全なほ場マップの作成、イネの最適窒素保有量、NDVIによる窒素量の推定に成功した。最終年の2000年はヘリからのNDVIの測定を加えたほ場実験、及び0.5haほ場の東半分について、開発したGPS不可変施肥機を用いて、総量を12.8%削減した可変施肥を行い、収量の均一化、施肥量の削減が図れることを明らかにした。収量センサーについても実用化の目途をつけた。

研究のイメージ

生物資源の低投入型生産機械システムに関する基礎研究