生物系特定産業技術研究支援センター

新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業

2000年度 研究成果

光過剰による光合成抑制機構の解明と遺伝子導入による回避システムの開発

研究項目及び実施体制(◎は総括研究代表者)

  • 光合成効率の低下要因の解明と遺伝子導入による光合成効率の改良
    (◎徳富光恵/農林水産省農業生物資源研究所)
  • C3植物へのC4光合成回路の付与
    (松岡信/名古屋大学生物分子応答研究センター)
  • 遺伝子導入による芝草の光合成機能と環境ストレス耐性の向上
    (趙徹/株式会社ジェイツー)

研究の目的

光合成にとって現在の地球環境は光が過剰な状態であり、植物の光合成効率は恒常的に抑制されている。本研究は、遺伝子導入技術を用いて、光過剰による光合成抑制を回避するシステムを植物に導入し、植物の光合成機能・物質生産能の改良を図ることを目的としている。

研究の内容

エネルギーアイドリングシステムの導入と解析(C3植物へのC4光合成回路の付与):光過剰で生じる過剰なATPを消去し過エネルギー状態の解消を図るため、C3植物であるイネおよびベントグラスにC4光合成回路を付与する。
蛋白質リサイクリングシステムの導入と解析:光過剰で引き起こされる蛋白質の損傷を修復するため、葉緑体内で作用する分子シャペロンを導入する。
分解産物スカベンジングシステムの導入と解析:損傷を受けた蛋白質や色素などを除去するためのシステムを開発する。

主要な成果

  • C3植物であるイネにC4植物であるトウモロコシのC4光合成酵素PEPC遺伝子を導入し、イネ内でPEPC蛋白質をトウモロコシ並に高発現させることに初めて成功した( Nature Biotec.17:76.1999)。この知見を元に、イネおよびベントグラスにおいて、C4光合成回路の構成に必要な複数のC4光合成酵素を高発現させることが可能となった。
  • C4光合成酵素遺伝子の進化のメカニズムの解析をおこない、C4光合成遺伝子の発現強度と発現の細胞種特異性とを統一的に理解するモデルを提出した。
  • 光合成の場である葉緑体内で分子シャペロン蛋白質(葉緑体局在性低分子量熱ショック蛋白質)を構成的に発現させることにより、植物の光酸化ストレス耐性が改良されることを明らかにした。

研究のイメージ

光過剰による光合成抑制機構の解明と遺伝子導入による回避システムの開発