生物系特定産業技術研究支援センター

新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業

2006年度 研究成果

生物機能の解明と活用のための糖鎖自動合成技術及び規則的な糖鎖ライブラリー合成技術の確立

研究の目的

生物機能の解明と活用のために、遺伝子・タンパク質に次ぐ第三の鎖としての糖鎖の機能を詳細に解明する必要がある。しかしながらその複雑な構造ゆえに、現在のところ標品となる糖鎖を入手することすら非常に困難である。そこで独自に開発した「だるま落とし保護法」という全く新しいコンセプトによる糖鎖合成手法を用い、糖鎖自動合成技術及び、規則的な糖鎖ライブラリー合成技術を確立し、多種多様な糖鎖を容易に供給できるようにし、農業、食品産業のみならず生命現象を取り扱う様々な産業分野の飛躍的発展に寄与する。

研究項目及び実施体制(◎は研究代表者)

  • 糖鎖自動合成技術の確立
    規則的な糖鎖ライブラリー合成技術の確立
    (◎今場司朗/独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 食品総合研究所)

研究の内容及び主要成果

  • 市販の有機合成ロボットを用い、分岐を有する糖鎖の位置選択的な自動合成に成功し、複雑な糖鎖でも自動合成を可能にする技術の基礎を築いた。
  • 隣り合った水酸基にそれぞれ「だるま落とし保護基」を導入した際、一方を除去する時に、他方のだるま落とし保護基が遊離した水酸基に転移するという問題を解決するとともに、ガラクトースをα選択的に結合させうる条件を確立し、3糖からなる糖鎖の規則的なライブラリー合成に成功した。これにより、様々な糖鎖を一度に合成可能なライブラリー合成技術の基礎を築いた。

見込まれる波及効果

農業、食品産業のみならず生命現象を取り扱うすべての分野で糖鎖の機能が脚光を集めている中、本研究の成果により、今までその複雑な構造ゆえに研究対象としての敷居が高かった糖鎖を、より身近にすることが出来、生命機能の解明の飛躍的な進展をもたらす起爆剤としての効果が見込まれる。この技術を用いれば、誰もがスイッチ一つで望みの糖鎖を得ることが可能になる糖鎖自動合成機が製造可能になるとともに、規則的な糖鎖ライブラリーの精密合成の成功により、ウイルスや、病原菌、毒素などを検知し、また、病気の診断に用いる糖鎖アレイの開発が可能になると期待されている。

主な発表論文

  • Komba S., et al. : A new colorimetric test for detection of hydroxyl groups in solid-phase synthesis. Tetrahedron Lett., accepted.
  • Komba S., et al. : A new method of carbohydrate synthesis in both solution and solid phases using a special hydroxy protecting group. Eur. J. Org. Chem. 24 : 5313-5329 (2005)
  • 今場司朗 : 糖鎖合成の新たな展開 糖鎖自動合成と糖鎖ライブラリー合成を可能にする新たな水酸基の保護基の開発. 化学と生物 44 (9) : 637-639 (2006)

研究のイメージ

生物機能の解明と活用のための糖鎖自動合成技術及び規則的な糖鎖ライブラリー合成技術の確立