生物系特定産業技術研究支援センター

新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業

2009年度 研究成果

油糧酵母による国産バイオディーゼルの効率的生産技術の開発

研究の目的

バイオディーゼル(脂肪酸メチルエステル, FAME)原料の廃食油は安定確保が困難で、且つ様々な植物由来の油脂が混在しているため、一定品質を保つには煩雑な工程を要する。そのため、FAMEの更なる普及拡大を図るには、生産量のみならず高品質化が技術的課題として挙げられている。
本研究では、国内で大量発生する副産物バイオマスを主原料として、酵母による効率的なFAMEの生産条件を解明することで、輸送燃料として利用可能なFAMEの新規生産技術の基盤を築く。

研究項目及び実施体制(◎は研究代表者)

  • 脂肪酸メチルエステル生産能の解析
  • 副産物バイオマスを原料とした効率的な脂肪酸メチルエステル生産条件の解明
  • 試作バイオディーゼルの特性解析
    (◎高桑直也/独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 北海道農業研究センター)

研究の内容及び主要成果

  • 細胞内にトリグリセリドとリパーゼを蓄積する酵母Cryptococcus curvatus TYC-19を生乳から分離し、その諸性質の解析から、当該菌株は製糖副産物であるビート糖蜜、チーズ製造副産物であるホエーを増殖炭素源として利用できることを見出した。
  • 当該培養菌体にメタノールのみを加えることによって、細胞外に漏出したトリグリセリドとリパーゼが1ステップで反応する特性を利用し、FAMEへの変換効率を90%以上とする効率的な培養・抽出条件を解明した。
  • 当該菌株および食用酵母Kluyveromyces lactis由来のFAMEの燃料性状は、我が国のバイオディーゼル規格の重要項目に適合することを明らかにした。また、FAMEの製造副産物には希少価値の高い機能性糖脂質が含まれていることを見出した。

見込まれる波及効果

糖蜜など食料と競合しない副産物バイオマスに新しい付加価値が創出される。当該技術をモデルとして、各地域で発生するバイオマスを原料とすることで、エネルギー自給率の更なる向上に寄与する。また、肌の保湿効果を有するセラミドも同時に回収可能なことから、化粧品および健康食品産業にも波及効果が生まれる。

主な発表論文

  • 高桑直也 : 酵母によるバイオディーゼル燃料の生産. ニューカントリー 55 : 22-23 (2008)
  • Takakuwa N., et al. : Significance of the KlLAC1 gene in glucosylceramide production by Kluyveromyces lactis. FEMS Yeast Res. 8 : 839-845 (2008)
  • Sugai M., et al. : Characterization of sterol lipids in Kluyveromyces lactis strain M-16 accumulating a high amount of steryl glucoside. J. Oleo Sci. 58 : 91-96 (2009)
  • Takakuwa N. and Saito K. : Conversion of beet molasses and cheese whey into fatty acid methyl esters by the yeast Cryptococcus curvatus. J. Oleo Sci, in press

研究のイメージ

油糧酵母による国産バイオディーゼルの効率的生産技術の開発