生物系特定産業技術研究支援センター

新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業

1996年度 採択された研究課題

昆虫の生体機能に基づくバイオマイクロマシンの研究

研究代表者氏名及び所属

下山 勲 (東京大学大学院工学系研究科)

研究実施期間

平成8年度~12年度

研究の趣旨・概要

本研究でいうバイオマイクロマシンとは昆虫の生体機能とMEMS(微小電子機械システム、Micro Electro Mechanical Systems)を統合した微小なシステムで、たとえば、触覚などの生体機能を利用したバイオセンサ、昆虫行動を人為的に制御するシステム、生体機能を組み込んだ微小ロボットなどの総称である。
本研究の目的は昆虫の生体機能のうち、触覚、複眼、歩行、飛行について、センサ機能や行動を形態、生理、行動の立場から解析し、生体機能に基づくバイオマイクロマシンを構成することである。
本研究の実施においては、生物学的・生理学的取り扱いと、この結果を使ったバイオマイクロマシンの再構成の両面からアプローチする。具体的には、電気生理実験による脳神経系の単一および複数ニューロンの機能の解析、光学計測法による脳神経系のニューロシステムの解析、SQUIDによる計測などの最先端の計測技術を使ってこれらの昆虫機能の生理学的データを得るとともに、高速度カメラや行動解析装置を用いて行動学的データを得る。次に、解析結果をもとに触覚や複眼を利用したバイオセンサ、レセプタや神経レベルの刺激による飛翔や歩行行動の人為的制御システムなどをバイオマイクロマシンとして再構成する。
本研究の特徴は、(1)バイオマイクロマシンが生物の新たな研究・開発方法を与えること、(2)昆虫の生体組織を利用すれば触覚や複眼型の新たなバイオセンサを開発できること、(3)ある昆虫を人為的に制御することで昆虫の群を制御し、たとえば、人工的害虫駆除や受粉の可能性があることである。さらに、(4)昆虫の定型的で反射的な行動発現をモデルにしたロボットの行動知能の提案や、(5)分析だけでは得られなかった科学的知見が統合という方法によって得られることも挙げられ、波及効果も大きい。

研究項目及び研究担当者

  • バイオマイクロマシンによる昆虫機能の再構成
    (東京大学大学院工学系研究科 下山 勲 )
  • 昆虫の神経・行動機能を規範としたバイオマイクロマシンの研究
    (筑波大学生物科学系 神崎 亮平)

研究のイメージ

昆虫の生体機能に基づくバイオマイクロマシンの研究