生物系特定産業技術研究支援センター

新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業

1996年度 採択された研究課題

宿主決定の分子機構:植物マイコプラズマの遺伝子発現・制御メカニズム

研究代表者氏名及び所属

難波 成任(東京大学大学院 農学生命科学研究科)

研究実施機関

平成8年度~12年度

研究の趣旨・概要

植物マイコプラズマは、昆虫によって媒介され、植物体内では寄生的に、昆虫体内では共生的に生存するユニークなタイプの微生物で、農業生産上重要な植物病原微生物であり、世界中で600種以上の植物の病原として知られている。また、そのサイズもゲノムも地球上で最小の微生物の一つであり、原始細胞の共生の結果生じたとされる細胞器官(ミトコンドリアや葉緑体)と比較して、細胞内で自律増殖し、植物・昆虫間を水平移動できることや、植物の花器官を葉に変化させる(葉化)などの特異な病原性を持つ点では異なるものの、ゲノムサイズや細胞内に生息するなどの点で互いに非常に似ており、植物マイコプラズマの研究は、細胞器官の進化的起源の観点からも興味が持たれている。
本研究では、このような特徴を有する植物病原マイコプラズマが特に植物界と動物界の全く離れた生物の両者で増殖することに着目し、宿主が決定される機構を分子レベルで明らかにしようとするものである。具体的には、植物マイコプラズマが細胞内に共生あるいは寄生する際に発現する遺伝子や葉化等の病原性に関与する遺伝子を解明するとともに、これと並行してゲノムやプラスミドの解析を行い、植物マイコプラズマと宿主細胞の相互認識・制御に関わる各種遺伝子の発現機構を明らかにする。
本研究によって、たとえば、植物・昆虫の微生物病治療法や、耐病性導入戦略の構築が可能になるほか、ゲノムやプラスミドを用いた発現ベクターが構築でき、生物を利用した新しい有用物質生産にもつながるなど、農業分野のみならず、広く関連産業分野への波及効果が期待される。

研究項目及び研究担当者

  • 植物マイコプラズマの宿主決定の分子機構
    (東京大学大学院農学生命科学研究科 難波 成任)
  • 植物マイコプラズマの植物及び昆虫における宿主決定機構の個体・器官レベルでの解析
    ((財)農民教育協会鯉淵学園 土崎 常男)
  • 植物マイコプラズマの植物及び昆虫における宿主決定機構の組織・細胞レベルでの解析
    (農林水産省農業研究センター 塩見 敏樹)

研究のイメージ

宿主決定の分子機構:植物マイコプラズマの遺伝子発現・制御メカニズム