生物系特定産業技術研究支援センター

新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業

1996年度 採択された研究課題

光過剰による光合成抑制機構の解明と遺伝子導入による回避システムの開発

研究代表者及び所属

徳富 光恵(農林水産省 農業生物資源研究所)

研究実施期間

平成8年度~12年度

研究の趣旨・概要

植物は、進化の歴史の過程で地球環境の変動に巧みに適応し、現在に至っている。しかしながら、光合成能力という観点からみると、植物は必ずしもそれを最大限に発揮するようには進化せず、むしろ、光合成能力を抑えることによって現在の地球環境に適応してきたといえる。
現在の低二酸化炭素、高酸素という条件下での光環境は、光合成にとっては光過剰な状態であり、植物は光合成効率を積極的に低下させることによって、光過剰による傷害(光酸化ストレス)を回避している。特に、数多くの農産物を含むC3植物において、光過剰による光合成抑制は顕著であり、光合成能力の人為的改良の大きな妨げとなっている。本研究の目的は、光過剰による光合成抑制の主要因を明らかにし、それを人為的に回避するシステムを開発することによって、植物の光合成機能・物質生産能の改良を図り、植物の生産性の向上に寄与することである。
具体的には、遺伝子導入技術等を用いて、光過剰で生じる過剰ATPを消去し、過エネルギー状態の解消を図るためのエネルギーアイドリングシステムを導入した植物の作出や、光過剰で引き起こされるタンパク質の機能傷害等を修復するシステムを導入し、光傷害の緩和を図ることのできる植物の作出等を試みる。

研究項目及び研究担当者

光合成効率の低下要因の解明と遺伝子導入による光合成効率の改良
(農林水産省農業生物資源研究所 徳富 光恵)
C3植物へのC4光合成回路の付与(名古屋大学生物分子応答研究センター 松岡 信)
遺伝子導入による芝草の光合成機能と環境ストレス耐性の向上(株式会社ジェイツー 趙 徹)

研究のイメージ

光過剰による光合成抑制機構の解明と遺伝子導入による回避システムの開発