研究代表者氏名及び所属
入村 達郎 (東京大学大学院薬学系研究科)
研究実施期間
平成9年度~13年度(5年間)
研究の趣旨・概要
糖鎖とそれを認識するタンパク質分子であるレクチンが、細胞と細胞の相互作用を制御することを通して生体内における細胞の位置や行方を決定していることはよく知られている。しかし、レクチンの植物体内における役割には不明の点が多く、しかも天然に存在するレクチンは糖鎖結合特異性が限られている。
本研究では、マメ科レクチンの一つで、動物細胞表面に豊富に存在する糖鎖に結合することが解っているイヌエンジュマメレクチンの糖鎖認識ドメインの構造をランダムに改変し、糖鎖認識分子のライブラリーを作製し、天然に存在しない糖鎖認識特異性を持つ有用なものを選別する。この改変(サイボーグ)レクチンは、体内でユニークな交通パターンを持つ細胞のプローブとして利用できることから、動物の免疫応答やアレルギー、癌の転移などの機構の解明や制御技術の開発につながるものと期待される。(細胞交通=細胞の生体内移動)
また、本研究において開発された新規のレクチンをコードする遺伝子を植物に導入することにより、例えば、ヘリコバクターピロリ菌や感染性大腸菌と消化器粘膜との相互作用を妨げ、その感染を予防する新しい作物・食品の開発等が期待される。
研究項目及び実施体制(( )は研究担当責任者)
- リコンビナント改変レクチンライブラリーの作製
(東京大学大学院薬学系研究科 山本 一夫) - 改変レクチンライブラリーの細胞及び組織を用いた選別
(東京大学大学院薬学系研究科 入村 達郎) - 改変レクチン及びそれに由来する糖鎖結合ペプチドの特異性の解析
(東京大学大学院薬学系研究科 泉 由紀) - 改変レクチン及びそれに由来する糖鎖結合ペプチドの細胞交通への関与の解析
(東京大学大学院薬学系研究科 今井 康之) - 改変レクチン及びそれに由来する糖鎖結合ペプチドの粘膜上皮における細胞認識への影響の解析
(東京大学大学院薬学系研究科 入村 達郎)