生物系特定産業技術研究支援センター

新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業

1997年度 採択された研究課題

微生物由来の環境保全型害虫防除蛋白質に関する基盤研究

総括研究代表者氏名及び所属

酒井 裕 (京都大学大学院農学研究科)

研究実施期間

平成9年度~13年度(5年間)

研究の趣旨・概要

グラム陽性細菌Bacillus thuringiensis (BT菌)は、特異性の高い優れた殺虫タンパク質を産生する。これらの殺虫タンパク質は広く農薬として利用されているが、殺虫スペクトルが狭い、持続性が短いなどの問題がある。また、殺虫タンパク質遺伝子を組み込んだトランスジェニック作物が作出され、既に実用化されているが、耐性虫の出現等が問題となっている。このため、BT殺虫タンパク質の特性と作用機構に関する詳細な基礎的研究が必要となっている。
本研究では、BT菌が産生する昆虫特異的殺虫タンパク質(BTトキシン)をコードする遺伝子の解析、BTトキシンの特異性を決定する害虫の感受性細胞表面における受容体とBTトキシンとの結合機能の解析、及びBTトキシンの活性化過程の分子機構の解析を行い、新たなBT殺虫タンパク質を作成する。また、併せて自然界の様々な環境からBT菌及び類縁菌を単離し、新たな殺虫タンパク質をクローニングする。さらに、これらの研究成果を踏まえて、改変BT殺虫タンパク質遺伝子を組み込んだトランスジェニック生物を作成し、有害昆虫防除システムの開発を目指す。
本研究において作成する殺虫タンパク質は、耐性虫の出現や害虫の多様性に対応した優れた性能を備えており、従来より遥かに大きな需要が見込まれる。また、これにより安全な害虫防除剤や防除システムが開発され、環境保全に配慮した農業生産技術の確立が期待される。

研究項目及び実施体制(( )は研究代表者)

  • 環境保全型害虫防除剤の殺虫メカニズムに関する研究
    (大阪府立大学農学部 姫野 道夫)
  • 環境インパクトの小さい殺虫蛋白質の動態の解析と害虫防除システムの構築
    (京都大学大学院農学研究科 酒井 裕)
  • 微生物由来害虫防除蛋白質の探索と高生産技術の開発
    (信州大学農学部 千 菊夫)
  • 新規な双翅目昆虫特異的殺虫性蛋白質を産生するBT菌のスクリーニングと遺伝子解析
    (近畿大学生物理工学部 武部 聡)

研究のイメージ

微生物由来の環境保全型害虫防除蛋白質に関する基盤研究