生物系特定産業技術研究支援センター

新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業

1999年度 採択された研究課題

植物の耐寒性形質に関わる分子機能の複合的解析とその応用

総括研究代表者氏名及び所属

上村 松生(岩手大学農学部)

研究実施期間

平成11年度~15年度(5年間)

研究の趣旨・概要

地球温暖化が徐々に進行する現在においても、低温は世界の作物生産に影響を与える最大不安定要因の一つである。事実、世界各地で頻発する局地的異常低温により、毎年膨大な凍霜害が発生している。その被害を軽減するため、低温誘導遺伝子やその転写因子を導入し耐寒性を増大させる試みがなされている。しかし、複雑な耐寒性形質のために低温誘導遺伝子発現と凍結傷害発生回避機構との因果関係がはっきりしておらず、効率的アプローチを確立するには至っていない。 本研究では、高耐寒性植物を開発するための基礎的データを得るため、

1)遺伝子を強調発現させるアクティベーション・タギング法により、耐寒性を持たない植物にも応用可能な新しい耐寒性関与遺伝子を探索する。2)耐寒性の程度や様式の異なる様々な植物を用い、耐寒性に関わる物質の分子作用機構を単離細胞やモデル系を用いて解析すると同時に、耐寒性に関与する物質をコードする遺伝子の単離・解析を行う。3)以上の研究により得られた耐寒性関与遺伝子やその調節因子をコードした遺伝子を導入した形質転換体を作成し、個々の遺伝子の耐寒性機構への関与を解析する。

このような耐寒性形質に関する遺伝子発現レベルと生理機能レベルでの研究を有機的に連関させたプロジェクトは、高耐寒性植物の開発に大きく貢献するものと期待される。

<アクティベーション・タギング法>
カリフラワーモザイクウイルスの35Sプロモーター由来のエンハンサーを培養細胞や植物体に導入することより、導入された近傍の遺伝子の転写を活性化する方法。活性化された遺伝子はエンハンサーを目印にしてクローニングすることができる。

研究項目及び実施体制(()は研究代表者)

  • アクティベーション・タギング法を用いた植物耐寒性関与遺伝子群の探索
    (東京大学大学院理学系研究科 西田生郎)
  • 植物耐寒性関与遺伝子のアクティベーション・タギング法による分離と遺伝子導入による植物耐寒性の改良
    (九州大学大学院理学研究科 和田 元)
  • 耐凍性増大の分子的メカニズムに関する基礎的研究:生体膜の安定性に注目して
    (岩手大学農学部 上村松生)
  • 高耐寒性植物に存在する凍結制御機構に関わる分子機能の解析
    (農林水産省農業生物資源研究所 石川雅也)
  • 低温誘導遺伝子の耐凍性に及ぼす機能的役割の解析
    (北海道大学低温科学研究所 藤川清三)

研究のイメージ

植物の耐寒性形質に関わる分子機能の複合的解析とその応用