総括研究代表者氏名及び所属
大谷 敏郎(農林水産省食品総合研究所)
研究実施期間
平成11年度~13年度(3年間)
研究の趣旨・概要
遺伝子の発現には、DNAの配列だけでなく、そのゲノム上の位置が重要な役割を果たしている。特に遺伝子組み換えや変異による有用形質の導入においては、導入位置が成否を左右する要因のひとつと考えられている。そのため、DNAの配列がゲノム上のどこにあるかを、精密かつダイレクトにとらえる技術が求められている。 本研究では、従来の蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)法が抱えていた光学的限界(光の波長以下の大きさの対象物は観察できない)を克服し、特定のDNA配列のゲノム上における位置を高感度かつ直接的に同定する手法、名付けて「ナノFISH法」の確立を目指す。具体的には、DNA鎖上の目標領域をFISH法で蛍光標識してから基板上へ展伸・固定し、その位置をナノレベルで測定する。
本手法の確立により、ゲノム上で複数遺伝子の位置関係を同時に計測可能となるとともに、遺伝子を構成するDNA配列のわずかな変異の迅速検出が可能となる。これにより、ゲノム解析において最大の問題であるDNA断片からの遺伝子地図の再構成に要する時間が大幅に短縮されるとともに、個体レベルでの遺伝的変異も見つけだすことが容易となる。その結果、わが国独自の技術として、有用形質を有する作物の作出や遺伝子特許の取得に大きく貢献するものと期待される。
研究項目及び実施体制(()は研究代表者)
- ナノ領域の蛍光標識法の開発
(日本原子力研究所高崎研究所 廣瀬玉紀) - 試料の固定と光プローブ顕微鏡による蛍光ラベルの高感度検出
(農林水産省食品総合研究所 大谷敏郎) - ナノFISH法のための光プローブ顕微鏡装置の最適化に関する研究
(セイコーインスツルメンツ株式会社基盤技術部 村松 宏)