生物系特定産業技術研究支援センター

新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業

2000年度 採択された研究課題

インスレーターの作用機構の解明と有用生物作出技術の開発

総括研究代表者氏名及び所属

赤坂 甲治(広島大学大学院理学研究科)

研究実施期間

平成12年度~平成16年度(5年間)

研究の趣旨・概要

遺伝子導入による有用動植物の作出や遺伝子治療が、近年多く試みられている。しかし、導入した遺伝子が周囲のクロマチンの影響を受けるため不活性化されるなど、導入遺伝子の発現制御に問題がある。また、発現抑制を少しでも遅らせるために、プロモーターとして強力なウイルス由来の遺伝子が用いられていることなどから組織・器官特異的な発現は期待できず、安全性にも問題がある。
本研究では、これを克服するために、遺伝子発現の独立性を保証するインスレーター(クロマチンの境界)を利用した遺伝子導入法を開発する。そのための基礎研究として、(1)動物、植物からインスレーターを網羅的にクローニングし、その分子機構を明らかにする。これにより、内在性(遺伝子導入の対象となる生物種由来)のインスレーターと、内在性の組織特異的プロモーターを用いた遺伝子導入が可能になる。
この基礎研究成果を用いて、(2)遺伝子導入植物による有用生理活性物質の生産技術、(3)多分化能をもつ幹細胞に導入した遺伝子を持続的に発現させる技術の開発、および(4)移植医学、疾患モデル、動物工場などに活用できる遺伝子組換え家畜の作出への取り組みを行う。
その結果、植物による低価格・非アレルギー性ワクチンや、家畜による生理活性物物質の安定的生産、再生医療用の免疫欠損ブタの作出技術などが開発されると期待される。

研究項目及び実施体制(( )内は研究代表者)

  • インスレーターの検索とその機能の分子基盤の解明
    (広島大学大学院理学研究科 赤坂甲治)
  • インスレーターの抗DNAメチル化効果の解明
    (大阪大学たんぱく質研究所 田嶋正二
  • インスレーターを利用したワクチン生産植物の作製
    (奈良先端科学技術大学院大学 吉田和哉)
  • インスレーターを利用した幹細胞における導入遺伝子の持続的発現技術の開発
    (京都大学ウイルス研究所 松岡雅雄)
  • インスレーターの遺伝子組み換え家畜への利用
    (農林水産省畜産試験場 安江 博)

研究のイメージ

インスレーターの作用機構の解明と有用生物作出技術の開発