生物系特定産業技術研究支援センター

新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業

2000年度 採択された研究課題

ラショナル・プロテイン・デザインおよびセレクション法の確立による「スーパープロテイン」の創出

総括研究代表者氏名及び所属

多比良 和誠(東京大学大学院工学系研究科)

研究実施期間

平成12年度~16年度(5年間)

研究の趣旨・概要

近年、遺伝子工学のめざましい進歩から、「機能性タンパク質の機能向上及び機能改変」が実現可能になり、工業的に利用価値の高い数多くの有用タンパク質が誕生してきている。しかしこのような有用タンパク質は必ずしも目的に応じて自由自在にかつ合理的にタンパク質の一部分を改変し得られたものではない。それは現存する変異型タンパク質作成技術のほとんどが「20種類のアミノ酸」の範囲内で行われているため、タンパク質のデザインや選出法に制限が生じるからである。
本研究では、まず、目的タンパク質を得るために目的に応じた人工側鎖を持つ非天然アミノ酸を分子軌道法等を用いてデザイン(ラショナル・プロテイン・デザイン)し、有機合成により側鎖を有する非天然アミノ酸を調製する。次に、その導入系を利用して合理的にタンパク質を構築・選抜する系を確立する。本研究で用いる機能性タンパク質の新規探索システム(ラショナル・プロテイン・セレクション)は、無細胞系でのタンパク質合成を利用するため、機能性タンパク質の選抜の際の環境(温度・pHなど)を自由に設定でき、高活性化酵素の優れた選抜手法であり、更に、高濃度領域で毒性を発揮し従来の遺伝子組換え技術では大量調整の難しい有用タンパク質(例えばリボヌクレアーゼ、RNAヘリカーゼなど)の改変にもそのまま応用可能となり、潜在的に産業への大きな影響力を持っている。このように、本研究は「20種のアミノ酸の枠」を取り払うことでタンパク質改変に無限の広がりを可能とし、これにより天然タンパク質を超えるタンパク質(スーパープロテイン、例えば低温で高活性を示す酵素や高選択性を示すレクチンなど)の合理的な創出技術の開発が期待される。

研究項目及び実施体制(( )内は研究代表者)

  • 1 「スーパープロテイン」の創出にむけた新機能タンパク質の無細胞系新規選択法の開発と有用タンパク質の創生
    (東京大学大学院工学系研究科 多比良和誠)
  • 2 Rational Protein Selection法による新機能糖結合タンパク質の創出
    (山形大学理学部 長谷川典巳)
  • 3 スーパープロテイン創出にむけたタンパク質分子のデザインと構造解析
    (農林水産省食品総合研究所 小林秀行)

研究のイメージ

ラショナル・プロテイン・デザインおよびセレクション法の確立による「スーパープロテイン」の創出