生物系特定産業技術研究支援センター

新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業

2001年度 採択された研究課題

化学環境認識に基づく「昆虫型行動決定スイッチングシステム」 の解明

総括研究代表者氏名及び所属


尾崎 まみこ
尾崎 まみこ(京都工芸繊維大学繊維学部)

研究実施期間

平成13年度~17年度(5年間)

研究の趣旨・概要

昆虫は、シンプルな構造の接触化学感覚器の中に、摂食、産卵、集団維持など、個体と種の生存の要となる行動のオン・オフに必要な化学情報を厳選し受容できるよう適化された、限られた数の受容細胞を持っている。本研究は、このような昆虫の接触化学感覚器を行動決定に有効な神経信号を脳へ送るミニマム仕様の「行動決定スイッチ」として捉え、将来的にわれわれが利用できる「化学環境センシングシステム」のモデルとして、その仕組みの解明を目指す。
接触化学感覚器の中に機能的に配置されている受容細胞に照準を合わせ、昆虫の受容体遺伝子を組み込んだトランスジェニック線虫における化学走性改変実験などの分子生物学的手法により、化学受容タンパク質の特性を調べるとともに、電気生理学的手法によって、受容タンパク質の特性に依存して成立する細胞の応答特性を調べ上げ、受容細胞の組合せによって特徴づけられる、化学環境認識に基づく行動制御機構を解明する。
これにより得られた知見は、自然環境における様々な化学情報を目的に応じて指標化し、監視するセンサ(湖沼の富栄養化のセンサ、森林食害の深刻度のセンサ等)開発への応用や、人の生活圏における害虫コントロールや地球共生系全体としての昆虫種多様性の保持等への利用が可能になる。

5.研究項目及び研究体制(( )内は研究代表者)

  • 昆虫型行動決定スイッチングシステムとして作動する接触化学受容細胞の機能タンパク質とその遺伝子の特定
    (京都工芸繊維大学繊維学部 尾崎 まみこ)
  • 昆虫の化学受容細胞の作動機構と行動決定システムにおける役割
    (電気通信大学電気通信学部 中村 整)
  • 昆虫の接触化学センシングシステムを通した行動制御の基礎研究
    (独立行政法人 農業生物資源研究所 朝岡 潔)

研究のイメージ

化学環境認識に基づく「昆虫型行動決定スイッチングシステム」 の解明