生物系特定産業技術研究支援センター

新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業

2001年度 採択された研究課題

非メチオニン型翻訳開始機構の解析とその利用法の開発

研究代表者氏名及び所属

中島 信彦
中島 信彦(独立行政法人 農業生物資源研究所)

研究実施期間

平成13年度~17年度(5年間)

研究の趣旨・概要

生物が行うタンパク質の合成開始では、「翻訳開始メチオニンtRNA (Met-tRNAi)」という特殊なtRNAが使われる。従って、メチオニン以外のアミノ酸からの合成開始は事実上不可能だった。しかし、昨年、特定の昆虫RNAウイルスがグルタミンやアラニンからタンパク質合成を行うことが判明した。ウイルスRNAが形成する高次構造が鍵となってリボソームを翻訳領域に導き、Met-tRNAiの関与なしにタンパク質を合成すると考えられるが、その詳細な分子機構は不明で る。
本研究では、昆虫ウイルスのRNA高次構造によるメチオニンに依存しない翻訳開始の機構を解析し、それをタンパク質生産に利用することを目的とする。現在想定されているRNA高次構造をさらに解明し、この構造と相互作用する蛋白性の因子類の探索・同定、高次構造周辺の塩基配列が翻訳効率に及ぼす影響、リボソームとの結合様式の解析等を通じて、分子機構を解明する。これで得られた情報を基に、高次構造を安定化させるような塩基置換を導入し、任意のアミノ酸からタンパク質合成開始を可能にする。また、この現象がウイルス以外の一般の真核生物遺伝子で起きているかどうかも調査する。
これまでの翻訳系では、合成されるタンパク質の先頭に必ずメチオニンが取り込まれるため、特殊なタンパク質分解酵素で切断された後に生理活性を獲得するようなタンパク質の試験管内での直接生産は困難だった。この技術が確立されれば、任意のアミノ酸を先頭にもつタンパク質を試験管内でも合成でき、分子生物学全般にわたる基礎研究から機能性タンパク質の食品への利用など、農林水産業に広く貢献できる。

研究項目及び実施体制(( )内は研究担当者)

  • RNA高次構造による非メチオニン型翻訳開始機構の解析
    (独立行政法人 農業生物資源研究所 中島 信彦)
  • 非メチオニン型翻訳開始機構の利用法の開発
    (独立行政法人 農業生物資源研究所 中島 信彦)

研究のイメージ

非メチオニン型翻訳開始機構の解析とその利用法の開発