生物系特定産業技術研究支援センター

新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業

2002年度 採択された研究課題

受精卵と核移植卵の相同性;クローン個体作出への応用

研究代表者氏名及び所属

角田 幸雄
角田 幸雄(近畿大学農学部)

研究実施期間

平成14年度~18年度(5年間)

研究の趣旨・概要

1997年2月に英国のWilmutらが羊の体細胞を核移植することによって1頭の子羊を作出したことを報告して以来、羊、マウス、牛、山羊、豚、ウサギで多数の体細胞クローン個体が生産されている。我国では、ヒトクローンの作出を法律で禁止する一方、動物における研究は基礎生物学、基礎医学、有用家畜類の育種・改良・増殖、絶滅種の救済、再生医療などの多くの分野で画期的な貢献をする可能性が高いことから適宜推進するとされている。一方、体細胞やES細胞からつくられるクローン個体の割合は低く、また得られた個体の多くは死亡したり、形態に異常が認められている。社会は、核移植技術が多くの分野ではたす役割を認めながらも、異常個体の出現頻度が高い現在の技術で作りだした家畜の生産物を食料としたり、医療へ応用することに不安感を示している。
そこで本研究では、(1)正常な個体への発生能を持つ受精卵と相同な核移植卵を作り、選ぶ技術を開発する。未受精卵に核移植した核は、初期化されて個体への発生能を獲得するが、初期化に関わる因子を利用して正常な核移植卵の作出をめざす。また、細胞と核移植卵の培養条件の確立など新しい核移植技術を開発する。さらに、核移植卵と受精卵との違いを分子レベルで明らかにし、正常な個体への発生能が高いと期待される指標を検索する。
また、(2)主としてES細胞を用いて細胞を分画し、個体への発生能を調べることによって、正常なクローン個体を形成する可能性の高い細胞を選別する指標を開発する。また、得られた指標が体細胞に適用できるか否かを検討する。
このような研究で得られた成果から、正常な個体への発生能の高い安全なクローン個体作出技術が開発され、農林水産業をはじめとする多くの分野において、その波及効果が期待される。

研究項目及び実施体制(( )内は研究担当者)

  • 受精卵と相同な能力を持つ核移植卵の作出、選別に関する基礎的研究
    (近畿大学農学部 角田 幸雄)
  • 未分化細胞等の分化・発生能の評価技術の開発
    (独立行政法人 農業生物資源研究所 徳永 智之)

研究のイメージ

受精卵と核移植卵の相同性;クローン個体作出への応用