生物系特定産業技術研究支援センター

新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業

2002年度 採択された研究課題

ナノ加工技術を利用した膜タンパク質のナノバイオロジー

研究代表者氏名及び所属

野地 博行(東京大学 生産技術研究所)

研究実施期間

平成14年度~18年度(5年間)

研究の趣旨・概要

ゲノム配列が次々と明らかにされつつある現在、遺伝子に基づいて合成され実際の生理機能を担うタンパク質の機能解析がボストゲノム研究として重要となっている。なかでも生体膜に埋まって働く膜タンパク質は、膜電位を利用したエネルギー変換・情報伝達・膜輸送など、細胞にとって不可欠な生理機能を担っていることから、その機能解析が特に急がれている。
そこで、本研究では、膜タンパク質に任意の膜電位を与えて、その動く様子を1分子単位で計測することで、その機能を明らかにする。具体的には、膜タンパク質を含む生体膜(直径数ミクロン)を用意し、これを最先端のナノ加工技術で作製したナノメートルサイズの電極上に固定する。これを用いて膜電位を発生させ、ナノ電極上で回転するモータータンパク質や、膜を介して物質輸送を行なうトランスポーターの構造変化を1分子観察する。
さらに、上記の実験システムの開発過程で得られる、生体とナノ加工技術を統合した新しい技術を生かして、タンパク質の合成から精製・機能解析までを一括して行うことができるマイクロ生化学チップの開発を計画している。このチップは、様々な検査チップとしての利用も考慮して、タンパク質の迅速な機能解析ができるものを目指している。
以上のように、本研究では全く新しい膜タンパク質の研究方法を確立することで、従来明らかにできなかった多くの基礎的知見が得られることが期待できる。さらに、マイクロ生化学チップの開発などにより、人工ナノ構造体を積極的に利用した先進的な試験研究基盤技術の発展も期待できる。

研究項目及び実施体制(( )内は研究担当者))

  • 膜タンパク質の調製及び1分子観察
    (東京大学 生産技術研究所 野地 博行)
  • ナノ電極の作製及び評価
    (東京大学 生産技術研究所 竹内 昌治)
  • マイクロ生化学チップの作製及び評価
    (東京大学 生産技術研究所 藤井 輝夫)

研究のイメージ

ナノ加工技術を利用した膜タンパク質のナノバイオロジー