生物系特定産業技術研究支援センター

新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業

2004年度 採択された研究課題

酵母の発酵環境ストレス適応機構の解明と新規な発酵生産系開発への基盤研究

研究代表者氏名及び所属

高木 博史
高木 博史(福井県立大学生物資源学部)

研究実施期間

平成16年度~20年度(5年間)

研究の要旨・概要

酵母は種々の発酵環境において、冷凍・エタノールなど多様なストレスを受けながら機能を発揮しているが、ストレスによって細胞内タンパク質は正常な構造が崩れ、機能を失った「異常タンパク質」になる。生物はある程度のストレス適応能力を備えているが、長時間に渡りストレスに曝されると、処理しきれない異常タンパク質が蓄積し、生育が阻害され死に至る。そのため、酵母の有用機能が制限され、発酵生産力にも限界がある。
本研究では、我々が見いだした酵母のストレス適応機構、特にアミノ酸プロリンのタンパク質保護機能に基づく「異常タンパク質の生成回避機構」、および細胞内タンパク質分解に重要なユビキチンシステムによる「異常タンパク質の検知処理機構」に着目し、これらを解明する。また、最新のポストゲノム解析によって、実用的な条件下における酵母の遺伝子発現ネットワークを解明し、ストレス適応機構の研究に役立てる。さらに、得られた知見をもとにタンパク質工学や代謝工学の手法を用いて、各機構の高機能化(プロリンの細胞内蓄積、ユビキチンシステムの強化など)を行ない、優れたストレス耐性能力を有する産業酵母(パン酵母、清酒酵母など)の作製と実用化に向けた開発技術を確立する。
本研究により、新しい発酵生産系の開発を通して、発酵生産性の著しい改善と向上に伴うパン類や酒類の効率的生産(冷凍パン生地、高濃度エタノール生産など)が実現し、酵母利用産業が飛躍的に発展する。また、エタノール生産能を強化した酵母による様々なバイオマスの高度利用など酵母機能を活用した新産業の創出も期待できる。

研究項目及び実施体制(()は研究担当者)

  • 異常タンパク質生成を伴うストレスに対する酵母の適応機構の解明(福井県立大学 生物資源学部 高木 博史)
  • パン酵母におけるストレス耐性の網羅的解析と新機能開発(独立行政法人 食品総合研究所 応用微生物部 島 純)
  • 清酒もろみにおける酵母の遺伝子発現ネットワーク解析とその応用(独立行政法人種類総合研究所遺伝子工学研究室 下飯 仁)

研究のイメージ

 酵母の発酵環境ストレス適応機構の解明と新規な発酵生産系開発への基盤研究