研究代表者氏名及び所属
柴田 武彦(独立行政法人理化学研究所)
研究実施期間
平成16年度~20年度(5年間)
研究の要旨・概要
新品種開発を担う育種技術は、食糧の安定生産、食品の高機能化、環境問題対応の要となっている。現在、安全性で十分に実績のある伝統的な交配等の育種技術は効率の面で問題がある一方、これら問題の解決策と思われた人工的な組換えDNA技術はいまだ社会に十分受け容れられるに至っていないのが実情である。
そこで、本研究においては、組換えDNA技術を用いることなく、伝統法である生物固有の相同組換え機構を利用して、ゲノム中の任意の標的遺伝子をピンポイントで効率よく迅速に改変する新世代ゲノム加工技術の開発を目指す。
これまで、種子、精子、卵子といった配偶子をつくるときに起こる減数分裂に働く相同組換え開始酵素Spo11等を制御して、酵母などで自然な相同組換えが生じ難い領域においても高頻度 (集団の1/4以上)に標的遺伝子の組換えを実現した。
この手法を基に、高等生物のモデルとしてのイネとショウジョウバエにおいてSpo11誘導・制御法を開発して、標的とする遺伝子で高頻度相同DNA組換えを誘導し、望む領域で意図したとおりに効率よく働くゲノム加工を実現する。改変を行う標的遺伝子として、イネではイモチ病抵抗性R遺伝子を、ショウジョウバエでは卵形成遺伝子を選び、その有用性を検討する。
本研究で目指す我が国発の新技術は、原理的には伝統的な交配育種の延長線上にあり、また、導入遺伝子の挿入部位を制御できるまでに至ってない組換えDNA技術に比べて優れており、社会の信頼感が比較的得やすいものと期待できる。
研究項目及び実施体制(()は研究担当者)
- 組換え開始酵素Spo11による標的相同組換え活性化法の確立
(独立行政法人理化学研究所 柴田武彦) - 組換え開始酵素Spo11によるイネの相同組換え制御
(独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構作物研究所 若狭暁) - 組換え標的遺伝子特異的に結合するタンパク質ドメインの開発
(早稲田大学 胡桃坂 仁志) - 昆虫での, Spo11誘導による高効率な標的相同組換え法の確立
(国立大学法人九州工業大学大学院 草野 好司)