研究代表者氏名及び所属
奥田 隆(農業生物資源研究所)
研究実施期間
平成16年度~20年度(5年間)
研究の要旨・概要
ネムリユスリカ幼虫は、体内の自由水を完全に失った無代謝の状態(クリプトビオシス)で乾燥に耐え、水に戻すと蘇生できる能力を持つ。このクリプトビオシス状態は、-270°Cの極低温や100°Cの高温、100%エタノール浸漬などの極限環境にも耐える。乾燥したネムリユスリカ幼虫の中枢神経、消化器官、脂肪体(肝臓に相当)、血球、筋肉などの組織は、蘇生可能な状態で長期的にしかも常温で保存されている。この高等多細胞生物の極限的な乾燥耐性機構の解明は、基礎研究の観点のみならず応用面にも大変興味深いテーマであると考えられる。そこでこのクリプトビオシスの分子機構を解明し、分子生物学的および物理化学的モデルを構築することを目的とする。
本研究では、(1)トレハロースの代謝制御因子やその他の乾燥誘導性因子群の発現、合成、移動、局在、相互作用を生理生化学的、分子生物学的に解析するとともに、(2)生体内でのトレハロースとLEAタンパク質の相互作用を物理化学的に解析することにより、クリプトビオシスの誘導、覚醒等の分子機構の解明に取り組む。この成果は、将来的には食肉や臓器等の常温乾燥長期保存法の技術開発に応用でき、食品加工・貯蔵や医療等の産業分野の発展に貢献するものと期待される。
研究項目及び実施体制(()は研究担当者)
- ネムリユスリカのクリプトビオシスの分子機構の解明
(独立行政法人農業生物資源研究所 奥田 隆) - ネムリユスリカのクリプトビオシスの物理化学的機構の解明
(国立大学法人東京工業大学バイオ研究基盤支援総合センター 櫻井 実)