生物系特定産業技術研究支援センター

新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業

2004年度 採択された研究課題

昆虫免疫応答改変によるアンチ・インセクトベクターの開発

研究代表者氏名及び所属

嘉糠 洋陸
嘉糠 洋陸
(東京大学大学院薬学系研究科)

研究実施期間

平成16年度~20年度(5年間)

研究の要旨・概要

マラリアや西ナイル熱、日本脳炎やフィラリアなど感染症は、蚊やハエ、ノミやシラミなどの節足動物により媒介される。即ち、それぞれの疾患を引き起こす病原体(ウイルスや寄生虫)が節足動物の体内で成長・増殖し、それらの病原体が動物宿主に伝播されることにより感染が成り立つ。このような病原体媒介節足動物はインセクトベクター("運び屋昆虫")と呼ばれ、人間に加え家畜や伴侶動物(ペット)にも感染症を媒介し広く被害を及ぼしている。またこれらの中には人間とペット・家畜間に病原体が相互伝播する人畜共通感染症を媒介するものも多数存在する。
本研究は、節足動物を媒体とした感染症の制圧のため、新しい視点としてインセクトベクター側に着目し、感染症の病原体を伝播することの出来ない新しい昆虫宿主("アンチ・インセクトベクター")を開発するための研究基盤となるものである。本研究では、研究室レベルの実験動物昆虫であるキイロショウジョウバエを用いて、マラリア原虫の発生を制御する遺伝子群の同定を試みる。このショウジョウバエ実験系から感染症病原体の生育に影響を及ぼすことが可能な遺伝子を探索し、この結果を応用することによって、マラリア原虫の生来の宿主であるハマダラカの免疫応答を改変し、体内で病原体を成育させ得ないアンチ・インセクトベクターの開発を試みる。
節足動物媒介による人畜共通感染症は、従来より、人のみならず家畜にも被害をもたらしてきた。上記の基礎的研究によって得られる知見は、節足動物側を制御して感染症や畜産物の被害を軽減するという新しい概念を確立すると考えられる。また、これらの方法論をハマダカラのみならずノミやシラミ、ダニなどの他種のインセクトベクターに応用することによって、広く節足動物媒介感染症の撲滅に利用する等畜産業及び医薬産業に大きく貢献するものと期待される。

研究項目及び実施体制(()は研究担当者)

  • ショウジョウバエ・マラリア原虫発生抑制遺伝子の同定
    (国立大学法人東京大学大学院薬学系研究科 嘉糠洋陸)
  • マラリア原虫発生抑制遺伝子の生理機能の基礎的解析
    (国立大学法人東京大学大学院薬学系研究科 嘉糠洋陸)
  • マラリア原虫を伝播しない遺伝子組み替えハマダカラの作出
    (国立大学法人東京大学大学院薬学系研究科 嘉糠洋陸)

研究のイメージ

昆虫免疫応答改変によるアンチ・インセクトベクターの開発