生物系特定産業技術研究支援センター

新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業

2005年度 採択された研究課題

高次タンパク質の大量発現用バクミドの開発及び応用

研究代表者氏名及び所属

朴 龍洙
朴 龍洙 (国立大学法人静岡大学農学部)

研究実施期間

平成17年度~20年度(4年間)

研究の趣旨・概要

近年、科学研究の動向として、ゲノムから高次(高等動物由来)タンパク質へとライフサイエンス研究の対象が急速に広がってきたが、高次タンパク質の発現には、これまでの大腸菌の系において転写後修飾の不備によるタンパク質が機能を有さないという問題点を解決する必要がある。そこで、翻訳後修飾可能であり、かつタンパク質合成能力が極めて高いカイコを用いた外来遺伝子を発現する系が注目されている。しかし、これも煩雑な操作や遺伝子組換えに長時間を要するなどの理由で実用的に使われていない。
本研究は、上記の技術的な煩雑さや問題点を大幅に改善するために、研究代表者が開発してきた高次タンパク質の大量発現用バクミドの改良を目標とする。具体的には、大腸菌を用いて作成した組換えDNAをカイコに直接接種することによりタンパク質の大量発現を可能とする汎用性の高いバクミドの開発や、免疫系細胞表面受容体などの組換え膜タンパク質の生産とこれに必要なウイルスの作製に関する研究を行う。さらに、高次タンパク質の分解の抑制や、シャペロン遺伝子やシグナルペプチドの付与により、高次タンパク質を効率よくカイコ体液へ分泌させることにも取り組む。これにより生物機能を有する高次タンパク質の発現と回収を最適化し、実用化に適した改良型バクミド発現システムを開発する。
本研究によりヒトや動物由来の高次タンパク質を大量に発現できれば、今後動物薬を含んだ創薬分野、ライフサイエンスの基礎分野の飛躍的な研究の発展に貢献できる。また、カイコの高付加価値化を実現し、絹の生産のためのカイコが、高次タンパク質発現のバイオリアクターとして、将来のバイオ産業の中心へと変貌を遂げることが期待できる。

研究項目及び実施体制(()は研究担当者)

  • カイコをタンパク質生産工場とするバクミドの開発
    (国立大学法人静岡大学農学部 朴 龍洙)
  • 免疫系細胞表面受容体の組換えタンパク質とウイルスの作製
    (国立大学法人九州大学生体防御医学研究所 前仲勝実)

研究のイメージ

高次タンパク質の大量発現用バクミドの開発及び応用