生物系特定産業技術研究支援センター

新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業

2005年度 採択された研究課題

原虫病に対する非侵襲性迅速診断装置の開発

研究代表者氏名及び所属

井上 昇
井上 昇
(国立大学法人帯広畜産大学 原虫病研究センター)

研究実施期間

平成17年度~19年度(3年間)

研究の趣旨・概要

ほとんどの家畜感染症では診断時の血液材料採取が必須項目である。しかしながら動物からの安全で迅速な採血には、動物種ごとに採血部位や保定法を最 適化する必要があり、獣医師の経験と熟練が要求される。また、吸光ELISA法や蛍光抗体法などによる従来の抗体検出診断法では、動物種ごとに異なる検出 用2次抗体を使用する必要から、診断キットを動物種ごとに開発する必要があり非効率的である。このため対象とする動物の汎用性が高く、簡便な非侵襲性診断 法の開発は、感染症診断とスクリーニングの効率化、国内外の人獣共通感染症流行予測の高精度化と蔓延防止の点で重要な課題となっている。
本研究で はカーボンナノチューブ(Carbon Nanotubes: CNT)の電気特性を利用した超高感度検出技術と、固体表面修飾技術並びにバイオテクノロジーの融合により、原虫病関連分子、特に家畜のトリパノソーマ病 およびタイレリア病関連分子を非侵襲条件で低コストかつ迅速・高感度に検出するシステムを構築する。CNTバイオセンサーは、吸光ELISA法に比し、数 千?数万倍高感度であることが予備実験で判明しており、携帯電話サイズまで小型化できるので、フィールドで家畜牛などの唾液から高感度に抗体や病原体を検 出できる非侵襲性簡易携帯診断装置の作製が可能である。また、分子間相互作用を直接検出するため、理論的には液体状の検査材料であればどのような物でも測 定可能であり、動物種ごとに検査キットを作製する必要がない。これによってもたらされる家畜衛生および公衆衛生上のメリットは非常に大きい。また、本研究 で開発する診断装置は安価で簡便な分子間相互作用検出装置であるので、将来、食品・環境分野などで食品添加物、農薬、環境ホルモンなどの迅速検出装置とし て応用することも期待できる。

研究項目及び実施体制(()は研究担当者)

  • 原虫用組換え抗原の精製とCNTバイオセンサーの実用評価
    (国立大学法人帯広畜産大学原虫病研究センター 井上 昇)
  • 原虫検出用CNT-バイオセンサーの作製と性能評価
    (国立大学法人北海道大学大学院情報科学研究科 末岡 和久)

研究のイメージ

原虫病に対する非侵襲性迅速診断装置の開発