生物系特定産業技術研究支援センター

新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業

2006年度 採択された研究課題

超微量安定同位体検出技術を応用した農水産物の新トレーサビリティ分析システムの開発

研究代表者氏名及び所属

伊永 隆史
伊永 隆史
(公立大学法人首都大学東京 大学院理工学研究科)

研究実施期間

平成18年度~21年度(4年間)

研究の趣旨・概要

有機物は炭素を骨格とし、水素・窒素・酸素などから主に構成される。これらの元素には、質量数が異なるものが存在し、これを同位体と呼ぶ。この同位体には、放射能をもつ放射性同位体と、放射能を持たず、天然に一定割合で安定に存在し、人体にも安全な安定同位体がある。この安定同位体の組成を比率で表したものを安定同位体比という(例:炭素では、質量数12の炭素と質量数13の炭素の比)。この比率は、生命活動によって変動するため、同じDNA配列を持つ同一の生物でも、産地・肥料・気候・地域といった生育環境を反映する。すなわち、安定同位体の比率の変動を明らかにすることは、生物固有の"化学指紋"を明らかにすると言える。
このような"化学指紋"の特性を利用し、本研究では、農水産物の新しいトレーサビリティ分析システムを確立する。その基礎として、様々な国と地域で栽培されている農水産物について、天然レベルの安定同位体比変動を分析する。また、これをふまえて、安定同位体比をコントロールして農水産物に目に見えない化学的な標識(ラベル付け)を行う"分子タグ"技術を開発する。この技術はごく微量な標識のために、人体や農水産物への影響は無く、極めて安全で革新的な化学的標識技術である。この"分子タグ"標識技術を利用することで、特定食品のブランド化、不正食品の流出防止などが可能となり、非常に有用性が高い。
本研究によって確立されるシステムは、あらゆる食品のトレーサビリティ分析システムの基礎基盤を構築し、世界初・日本発の新技術となり、世界をリードする革新的なシステムになることが期待される。

研究項目及び実施体制(()は研究担当者)

  • 天然レベル多元素安定同位体比マップの作成
    (公立大学法人首都大学東京 大学院理工学研究科 伊永隆史)
  • 有機分子の安定同位体比コントロール法の確立
    (独立行政法人海洋研究開発機構 松本公平)

研究のイメージ

 超微量安定同位体検出技術を応用した農水産物の新トレーサビリティ分析システムの開発