生物系特定産業技術研究支援センター

新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業

2006年度 採択された研究課題

環境中での細菌の環境汚染物質分解能を支配するプラスミド機能の解明

研究代表者氏名及び所属

野尻 秀昭
野尻 秀昭
(国立大学法人東京大学生物生産工学研究センター)

研究実施期間

平成18年度~20年度(3年間)

研究の趣旨・概要

土壌・水圏などの環境中に広く残留する難分解性汚染物質を分解除去し汚染環境を再生・高付加価値化することは、人類の健康な生活を守る上で、極めて重要である。特に耕地面積が限られた我が国においては、食糧生産の基盤である農耕地とその周辺土壌を安全な状態に維持することは、持続的食糧生産能力を維持する上でも特に重要な課題である。
難分解性物質による汚染を除去するためには、分解力を有する特殊な細菌を取得・培養し汚染サイトに移植するバイオオーグメンテーションが有効であるが、場当たり的に移植するだけでは分解菌が期待する分解力を発揮しない場合が意外に多い。難分解性物質分解菌では分解酵素遺伝子が接合伝達プラスミド上に存在する例が多いが、分解効果の不確実性の解消には、分解能(分解菌、分解プラスミド)の環境中での振る舞いを分子レベルで詳細に解析し、その理解に立脚して汚染環境に最適化(オーダーメイド化)されたバイオオーグメンテーション技術を確立する必要がある。
本研究はそのための科学的基盤を構築することを目的とし、ダイオキシン・カルバゾール分解IncP-7プラスミドを材料に、各種環境中でのその消長・接合伝達頻度を精査する。
また、接合伝達プラスミドは、異なる宿主内に伝達されると供与菌内とは異なる染色体-プラスミド間転写制御ネットワークを形成し分解酵素遺伝子の発現や保持・複製能などが変化すると考えられることから、バイオオーグメンテーションの成否に大きな影響を及ぼす転写制御ネットワークの多様性・宿主変化による可変性を解明する。

研究項目及び実施体制(()は研究担当者)

  • ダイオキシン・カルバゾール分解系IncP-7プラスミドpCAR1ホモログの分布の解明
    (国立大学法人東京大学生物生産工学研究センター 野尻秀昭)
  • pCAR1の環境中での動態モニタリング
    (国立大学法人東京大学生物生産工学研究センター 野尻秀昭)
  • pCAR1と多様な宿主細菌ゲノムとの特異的相互作用の解明
    (国立大学法人東京大学生物生産工学研究センター 野尻秀昭)

研究のイメージ

環境中での細菌の環境汚染物質分解能を支配するプラスミド機能の解明