ポイント
- ハクサイの生産地で問題となっている「根こぶ病」に抵抗性を持つ新品種が、DNAマーカー選抜により従来の半分の期間で開発されました。
- 新品種の利用により、農薬使用を削減できるため、生産コストの低減や省力化により安定生産へ貢献することが期待されます。
概要
生研支援センターでは、農林水産業や食品産業の分野で新事業の創出や技術革新を目指す研究に資金を提供しており、得られた研究成果を広く知っていただくため、これまでの研究成果を分かりやすく紹介する「成果事例こぼれ話」を作成・公表しています。
ハクサイは、漬物や鍋物の具材など私たちの食卓になじみ深い野菜の一つです。しかし、全国のハクサイの生産現場では、長年の連作や、近年の異常気象、気候変動により、根が肥大化・変形して、水分や肥料が吸えなくなり、枯れてしまう『根こぶ病』が深刻な問題となっています。
根こぶ病にはこれまで土壌改良や殺菌剤などの農薬で対処してきましたが、コストと労力がかかる上に、病気の発生を完全に防ぐことは困難でした。そこで、神戸大学を代表機関とする研究グループは、複数の根こぶ病抵抗性遺伝子を持つハクサイの新品種開発に取り組み、DNAマーカーを活用して、新品種「祭典ネオ70」を作り出しました。
根こぶ病菌には複数の型があり、型により有効な抵抗性遺伝子が異なります。このため、複数の型の根こぶ病抵抗性を持つ品種を開発するには、複数の根こぶ病抵抗性遺伝子を一つの品種に併せ持たせる必要があります。従来の品種育成では、異なる抵抗性遺伝子を持つ品種を交配し、得られた個体に病原菌を感染させて抵抗性を示す個体を選び出すことを繰り返す必要があり、目標とする品種を開発するには10年余の多大な時間と労力を要します。
一方、DNAマーカーを利用すれば、苗の段階で抵抗性遺伝子の有無を判定できます。研究グループは、このDNAマーカーを活用し、大量の個体から迅速に選抜することで、従来の品種育成に要する半分の期間で、複数の根こぶ病抵抗性遺伝子を併せ持つハクサイの新品種を開発しました。この新品種を栽培すれば、農薬使用を削減できるため、生産コストの低減や省力化により、安定生産に貢献することが期待されます。
詳しい内容は以下のURL又は別紙をご覧ください。
https://www.naro.go.jp/laboratory/brain/contents/fukyu/episode/episode_list/165470.html
これまでに紹介した研究成果は以下のURLをご覧ください(全58話掲載)。
https://www.naro.go.jp/laboratory/brain/contents/fukyu/episode/index.html