生物系特定産業技術研究支援センター

(24010) 農業用パイプラインの長寿命化・耐震対策技術の開発

事業名 農林水産業・食品産業科学技術研究推進事業(実用技術開発ステージ)
実施期間 平成24~26年(3年間)
研究グループ
(研究終了当時)
農研機構 農村工学研究部門、積水化学工業株式会社、株式会社栗本鐵工所、東亜グラウト工業株式会社
作成者 農研機構 農村工学研究部門 有吉 充

1 研究の背景

強化プラスチック複合管 (FRPM管) は農業用パイプラインに広く利用されている。地中に埋設された管は、地下水や地盤沈下などにより管周辺の土が不均一になると、部分的に変形し、破損する場合がある。そのため、部分的に変形した管の安全性を定量的に診断する技術が求められていた。

2 研究の概要

変形したFRPM管のひずみを計測し、管の破壊ひずみを求め、部分的な変形や破壊に対するFRPM管の安全性を定量的に診断する手法を開発した。

3 研究期間中の主要な成果

  • 地中に埋設されたFRPM管の曲率半径を計測して、管に生じているひずみを算出する手法を開発した。
  • ISO規格に基づく長期強度に関する破壊試験を実施して、クリープ変形を伴ったFRPM管の破壊時間と破壊時のひずみを計測し、長期的な破壊ひずみを求めた。
  • 長期的な破壊ひずみから、 FRPM管の安全性を評価する際の診断表を作成した。

4 研究終了後の新たな研究成果

「ひずみを指標とした強化プラスチック複合管の診断手法」マニュアルを作成した (マニュアルは、農研機構のホームページよりダウンロード可能)。

5 公表した主な特許・品種・論文

  • 特許第6261365号 配管の曲げひずみ推定方法およびその方法を用いた配管の安全率評価方法 (出願人 : 農研機構)
  • 特許第6389749号 配管の歪み検査装置 (出願人 : 積水化学工業、栗本鐵工所、農研機構)
  • 有吉充他, 曲げひずみ推定手法の強化プラスチック複合管への適用性の検証, 農業農村工学会論文集, 303, I.381-I.389 (2016).
  • 有吉充他, 埋設パイプラインの安全性照査のための曲げひずみ推定手法, 農業農村工学会論文集, 286, 349-357 (2013).

6 開発した技術・成果の実用化・普及の実績及び今後の展開

(1) 実用化・普及の実績

農業用パイプラインの現場で、破損事故の発生等により FRPM管の詳細な安全性評価が必要になった際に、本技術が適用された。これまでに20件以上の利用があった。

(2) 実用化の達成要因

実用化の達成要因は、簡便な方法で管の安全性を定量的に評価できる技術であることや、成果を論文に整理するとともに、利用者が使いやすいようにマニュアルを整備したことである。

(3) 今後の開発・普及目標

本技術の認知度を高め、関係機関の技術者に本技術の理解促進を図るため、「農業水利施設の機能保全の手引き(パイプライン)」等の農業農村整備事業に関する参考図書等への掲載を目標とする。

7 開発した技術・成果が普及することによる波及効果及び国民生活への貢献

管の破損事故の減少、既に埋設されている管の更新時期や長寿命化対策の適切な選定ができる。農業用水の安定的供給、農業水利施設の維持管理費の縮減、農村地域の防災力向上等に貢献できる。

(24010) 農業用パイプラインの長寿命化・耐震対策技術の開発