生物系特定産業技術研究支援センター

(24016) 南西諸島の飼料自給率を高める飼料用サトウキビとエコフィードTMRの利用技術の確立

事業名 農林水産業・食品産業科学技術研究推進事業(実用技術開発ステージ)
実施期間 平成24~26年(3年間)
研究グループ
(研究終了当時)
農研機構 九州沖縄農業研究センター、沖縄県農業研究センター、鹿児島県農業開発総合センター(畜産試験場、徳之島支場)、鹿児島県大島支庁徳之島事務所、徳之島町役場
作成者 農研機構 九州沖縄農業研究センター 服部 育男

1 研究の背景

南西諸島では全国13%の肉用子牛が生産され、サトウキビに次ぐ基幹農業であるが、耕地が限られるため飼料生産基盤が脆弱で輸入飼料依存率が高いことが経営の不安定化に繋がっている。

2 研究の概要

既存牧草の2倍の生産量がある飼料用サトウキビと黒糖焼酎粕やバガスなどの未利用資源を活用して飼料自給率を飛躍的に高める技術を確立・普及する。

3 研究期間中の主要な成果

  • 飼料用サトウキビ品種「しまのうしえ」は5月と8月の収穫が適期であり、施肥基準は製糖用サトウキビに準じることで問題ないこと、バンカーサイロで貯蔵可能であることを明らかにした。
  • 飼料化が有望な未利用資源を明らかにし、これらを利用した発酵TMRの品質に問題はないことを明らかにした。
  • 飼料用サトウキビを主原料とした発酵TMR給与は子牛育成、繁殖牛の飼養成績に問題がないことを実証した。

4 研究終了後の新たな研究成果

飼料用サトウキビ新品種「やえのうしえ」は黒穂病をはじめさび病などの耐病性に優れた系統である。「KRFo93-1」や「しまのうしえ」に比べ株出し収量は同程度で耐倒伏性に優れている。
https://www.naro.affrc.go.jp/collab/breed/0200/0202/119860.html

5 公表した主な特許・品種・論文

  • 服部 育男他.製糖残さ等地域未利用資源の混合が飼料用サトウキビを主体とする繁殖牛用発酵TMRの発酵品質と人工乾物消化率に及ぼす影響.日本暖地畜産学会報 58(1), 95-101 (2015).
  • 神谷 充他.飼料用サトウキビサイレージ、輸入エンバク乾草、トウモロコシ圧片、 大豆粕を混合した発酵TMR の給与が黒毛和種子牛育成期の増体成績に及ぼす影響.日本暖地畜産学会報 59(1), 33-35 (2016).
  • 境垣内 岳雄他.鹿児島県奄美地域における収穫時期の異なる年2回収穫栽培での飼料用サトウキビ品種「しまのうしえ」の生育および収量.日本作物学会記事 86(1), 56-61 (2017).

6 開発した技術・成果の実用化・普及の実績及び今後の展開

(1) 実用化・普及の実績

  • 飼料用サトウキビ品種「しまのうしえ」、栽培面積が計画時の5aから約50haに増加 (県、市町村からの聞き取り等) (H31.1現在)
  • 飼料用サトウキビを活用した発酵TMR調製・給与技術、製造量と利用農家数 : 母牛用TMR 4,000t/年(10戸)、子牛用TMR 150t/年(8戸) (H31.1現在)

(2) 実用化の達成要因

開発技術が現場ニーズと合致していたこと、また本事業では現地実証試験の実施が必須であったことから、試験実施中においても、現場の意見が適切に反映できる体制であった。

(3) 今後の開発・普及目標

飼料用サトウキビ新品種「やえのうしえ」の普及 (目標面積50ha)

7 開発した技術・成果が普及することによる波及効果及び国民生活への貢献

本研究成果は全国の繁殖雌牛の13%を有する南西諸島の子牛生産における飼料の安定供給に直接的に貢献し、肉用子牛供給の拡大を通して牛肉の安定供給に貢献できる。

(24016) 南西諸島の飼料自給率を高める飼料用サトウキビとエコフィードTMRの利用技術の確立