生物系特定産業技術研究支援センター

(25061C) 夏茶の付加価値向上のための新たな生葉保管と製茶技術の確立

事業名 農林水産業・食品産業科学技術研究推進事業(実用技術開発ステージ)
実施期間 平成25年~27年(3年間)
研究グループ
(研究終了当時)
鹿児島県農業開発総合センター、農研機構野菜茶業研究所、カワサキ機工株式会社、株式会社下堂園
作成者 鹿児島県農業開発総合センター 崎原 敏博

1 研究の背景

国内における夏茶の生産量は一番茶と同程度である。しかし、夏茶は従来の基準では品質が劣るとされ、一番茶に比べ低価格で取引されており収益性が低い。近年、摘採後の生葉を低温下で保管することで、製造された茶の品質を改善できることが明らかになってきた。そこで生葉の保管法と、それを加工する最適な製茶法を開発し、夏茶の付加価値を高めて収益性を上げる。

2 研究の概要

渋味が強く不快な香りがある夏茶を、カテキン等の機能性成分を保持したまま、生葉保管中の成分変化を活用し、品質を改善できる生葉冷却システムと製茶法を開発する。さらに、品質改善された夏茶を機器分析で客観的にわかりやすく説明し、普及をサポートする。

3 研究期間中の主要な成果

  • 現地茶工場の既設の生葉コンテナに装着でき、摘採された生葉の呼吸熱を除き、低温で維持することでカテキン等の機能性成分を保持したまま、品質を改善できる生葉冷却装置とその制御法を開発した。
  • 不快な夏茶臭を抑え、鮮度を保持して煎茶やかぶせ茶としての品質を高めたり、萎凋を進めて香りを発揚させたりする生葉保管条件と成分変化を明らかにした。
  • 夏茶臭および夏茶臭が改善された茶に関与する成分を特定し、生葉の保管で夏茶臭が改善される現象を解明した。さらに、品質改善された夏茶を機器分析で客観的に評価する方法を開発した。

4 研究終了後の新たな研究成果

  • 生葉温度管理と新製茶ハイブリッドラインを利用した高香気緑茶・高品質てん茶製造技術の開発
  • 既存製茶機械と新製茶ハイブリッドラインを組み合わせた紅茶の製造工程「夏茶の付加価値向上のための新しい生葉低温管理技術集」

    http://www.pref.kagoshima.jp/ag16/pamph/natsutya.html

5 公表した主な特許・品種・論文

  • 水上裕造他、夏茶に含まれる香気寄与成分 茶業研究報告 117,27-33(2014)
  • 水上裕造他、生葉の低温保管による夏茶臭改善効果の解明 茶業研究報告 119,21-28(2015)

6 開発した技術・成果の実用化・普及の実績及び今後の展開

(1) 実用化・普及の実績

  • 生葉初期冷却装置の販売台数 9台 、生葉低温保管装置の販売台数 3台(簡易型の1台含む)以上、カワサキ機工実績。他に鹿児島県内に3工場低温保管装置が設置されている(他製茶機メーカー)。
  • 有機かぶせ粉末茶、海外(EU)向け(2,3茶によるパウダーティ原料)、べにふうき萎凋香緑茶、有機てん茶

(2) 実用化の達成要因

  • 生葉初期冷却装置、生葉低温保管装置を商品化し販売
  • 生葉低温保管による品質改善効果や成分変化、新しい生葉保管技術と製茶事例をまとめた技術マニュアルを作成しWebで公表
  • 新しい生葉保管技術と製茶法を現地茶工場で技術実証し、市場性評価を経て夏茶商品(有機かぶせ粉末茶、べにふうき萎凋香緑茶)の素材とした。

(3) 今後の開発・普及目標

各機関連携して、現在急速に拡大しているてん茶の品質向上に寄与する技術でもあるため普及活動を行く予定。

7 開発した技術・成果が普及することによる波及効果及び国民生活への貢献

本研究により機能成分を豊富に含み、且つ嗜好性の優れる夏茶の商品を提供することは、新規の価値が創造でき、需要の拡大が国内外で期待できる。このことは茶産地の活性化にとどまらず、茶の持つ数多くの機能性による国民的な健康増進にも貢献する。

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