生物系特定産業技術研究支援センター

(25097C) 高機能性ウメ品種「露茜」の需要拡大を目指した安定生産技術並びに加工技術の開発

事業名 農林水産業・食品産業科学技術研究推進事業(実用技術開発ステージ)
実施期間 平成25年~27年(3年間)
研究グループ
(研究終了当時)
和歌山県果樹試験場うめ研究所、徳島県立農林水産総合技術支援センター、宮崎県総合農業試験場、農研機構果樹茶業研究部門、和歌山県工業技術センター、中野BC株式会社、近畿大学生物理工学部、徳島県東部農林水産局、宮崎県児湯農林振興局、紀州農業協同組合、株式会社南部美人
作成者 和歌山県果樹試験場うめ研究所 城村 徳明

1 研究の背景

梅干し消費が減少するなか、従来のウメにない赤色色素や機能性が豊富な新品種「露茜」が育成されたが、未だ栽培面積が少なく、収量も低いことから果実供給量が少なく加工品開発が進んでいないのが現状である。

2 研究の概要

「露茜」の栽培面積拡大と需要拡大を図るため、原料果実を早期に増産するための栽培技術を確立する。さらに、赤色色素や機能性を高めた付加価値の高い新規のウメ加工品を開発する。

3 研究期間中の主要な成果

  • 果実の増産に向けた栽培技術開発では、生産安定を図るための授粉品種の選定および「露茜」に適する樹形やせん定法などを開発し、栽培管理マニュアルを作成した。
  • 果実の赤みを高める追熟技術開発では、追熟効果が高まる適期収穫指標として利用できるカラーチャートを作成した。また、簡便な追熟法や輸送中に効率良く追熟させる輸送技術を開発した。
  • 加工品開発は、鮮やかな赤色の糖抽出果汁シロップや全麹製法の日本酒による梅酒の試作品が完成した。

4 研究終了後の新たな研究成果

  • 「露茜」の樹勢強化および増収効果が期待できる主幹上部へのウメ強樹勢品種高接ぎによる枝梢管理法を開発するとともに「露茜」特有に発生する病害虫の防除指針を開発した。
  • 「露茜」の大量追熟に適したエチレン濃度を見出し、産地JAにおいて約4tの果実を一度で安定して追熟できる追熟庫を整備した。

5 公表した主な特許・品種・論文

  • 特許第5796825号、梅類果実の赤化方法、和歌山県、近畿大学
  • 大江孝明他.ウメ'露茜'果実の熟度と着果条件がアントシアニンの蓄積およびその他の機能性成分含量に及ぼす影響.園芸学研究 12(4) , 411-418 (2013)
  • 大江孝明他.ウメ'露茜'果実の追熟条件がアントシアニンの蓄積とその他果実成分含量に及ぼす影響.園芸学研究15(4) , 439-444 (2016)

6 開発した技術・成果の実用化・普及の実績及び今後の展開

(1) 実用化・普及の実績

  • 「露茜」果実の増産では、栽培管理マニュアルの活用および現地実証園等における栽培講習会を通じて技術導入を進め、栽培面積を拡大し、産地化の推進を図った。
  • 追熟効果が高まる収穫基準として設定したカラーチャート値により適期収穫を徹底するとともに、産地JAによる大量追熟庫の整備および果実を輸送中に効率良く追熟させる技術の導入による生果の流通増大を図った。
  • 鮮やかな赤色の糖抽出果汁シロップや全麹製法の日本酒による梅酒をはじめ、約20品が商品化された。

(2) 実用化の達成要因

梅生産や消費の動向を生産者、産地JAおよび関係機関が共有し、一体となり「露茜」の産地化に取り組み、商品化が実現した。

(3) 今後の開発・普及目標

  • 本県の栽培面積は現在約18haであり、3~5年後には40haの普及を目指す。また、樹勢強化および増収効果の高い枝梢管理技術を確立し、1.5t~2t/10aの収量を目ざす。
  • 食品企業からの引き合いが強いことから更なる商品化を目ざす。

7 開発した技術・成果が普及することによる波及効果及び国民生活への貢献

  • 「露茜」の商品化拡大により、ウメ加工市場が拡大し、更なる加工需要が開拓されることで、地域経済の活性化に貢献できる。また、原料果実の需要増加により生産者の所得向上にもつながる。
  • 「露茜」には特徴的なポリフェノール成分が見いだされるなどの優位性が示されたことから、高機能性食品提供の機会が増加し、人々の健康力の向上への貢献が期待できる。

(25097C) 高機能性ウメ品種「露茜」の需要拡大を目指した安定生産技術並びに加工技術の開発