生物系特定産業技術研究支援センター

(25092C) マイタケの高機能性プレバイオティクス食品としての実証と低コスト栽培技術の普及

事業名 農林水産業・食品産業科学技術研究推進事業(実用技術開発ステージ)
実施期間 平成25~27年(3年間)
研究グループ
(研究終了当時)
北海道立総合研究機構林産試験場、帯広畜産大学食品科学研究部門、北海道大学大学院獣医学研究科、北海道情報大学医療情報学部、本別町農業協同組合
作成者 北海道立総合研究機構 林産試験場 津田 真由美

1 研究の背景

マイタケ「大雪華の舞1号」は、培地基材の一部を北海道の主要な造林樹種、カラマツに置換しても収量が減少しない特徴をもつ品種である。カラマツは安定供給が可能で、カンバ類よりも安価なことから、栽培コストの低減も可能になる。

2 研究の概要

本研究では、「大雪華の舞1号」の動脈硬化抑制作用と免疫増強効果のメカニズムをラットの腸内環境改善の観点から解明し、さらにヒトでのエビデンスを得ることにより、プレバイオティクス食品としての利用拡大と低コスト栽培可能な本品種の普及を目指した。

3 研究期間中の主要な成果

  • 「大雪華の舞1号」のプレバイオティクス効果(腸内環境改善効果及び腸管バリア機能の増強効果)を動物レベルで実証するとともに、腸内細菌叢に与える影響を次世代シーケンサー解析により明らかにした。
  • 「大雪華の舞1号」の摂食による抗動脈硬化作用を動物実験で実証するとともに、インフルエンザ感染試験では、インフルエンザウイルス増殖抑制効果を確認した。
  • 「大雪華の舞1号」の摂食による抗動脈硬化作用及びインフルエンザワクチン効果の増強作用をヒト介入試験で実証した。

4 研究終了後の新たな研究成果

  • 「大雪華の舞1号」について、新たな食品機能性を明らかにした。
  • 機能性素材としての活用を想定し、企業で生産された本品種について、マイタケ子実体の部位、栽培ロット内、ロット間におけるβ-グルカン含有量のバラつきを明らかにした。
  • 本品種の栽培方法と食品機能性に関するこれまでの知見、及び生産現場でのトラブルやその改善方法を栽培マニュアルとしてまとめた。

5 公表した主な特許・品種・論文

  • Nishihira, J. et al. Maitake mushrooms (Grifola frondosa) enhances antibody production in response to influenza vaccination in healthy adult volunteers concurrent with alleviation of common cold symptoms. Functional Foods in Health and Disease, 7, 462-482 (2017).
  • Sato, M. et al. CE-MS-based metabolomics reveals the metabolic profile of maitake mushroom (Grifola frondosa) strains with different cultivation characteristics. Biosci. Biotechnol. Biochem., 81, 2314-2322 (2017).

6 開発した技術・成果の実用化・普及の実績及び今後の展開

(1) 実用化・普及の実績

  • 北海道内の企業が「大雪華の舞1号」の生産を開始し、道内外での販売を行った。
  • 本品種加工品である乾燥マイタケ「華の舞」が北海道食品機能性表示制度の認証を受けた(2017年9月)。

(2) 実用化の達成要因

道内のきのこ生産者に対する普及、試験栽培及び技術指導を実施するほか、雑誌への投稿、新聞・テレビ等のメディア、各種イベントを通じた普及を積極的に行った。

(3) 今後の開発・普及目標

本品種の機能性食品素材としての利用拡大を目指し、新規食品機能性に関するエビデンスを蓄積する。

7 開発した技術・成果が普及することによる波及効果及び国民生活への貢献

食品機能性を活用した加工食品の開発は、きのこ生産者の収入安定化や食品産業への波及効果が期待できる。また、免疫増強作用等は、疾病予防や健康長寿の観点から国民生活の質の向上につながる。

(25092C) マイタケの高機能性プレバイオティクス食品としての実証と低コスト栽培技術の普及