生物系特定産業技術研究支援センター

(c004)南九州地域に適した焼酎麹用米専用品種の普及及び省力・低コスト栽培技術の確立

事業名 革新的技術開発・緊急展開事業(うち地域戦略プロジェクト)
実施期間 平成28年~30年(3年間)
研究グループ
(研究終了当時)
鹿児島県工業技術センター、鹿児島県農業開発総合センター、宮崎県総合農業試験場、九州沖縄農業研究センター、 ヤンマーアグリジャパン九州カンパニー、農事組合法人きっとかな田、池内米生産組合、宮崎県中部農業改良普及センター、宮崎県北諸県農業改良普及センター、鹿児島県北薩地域振興局農政普及課、西酒造株式会社
作成者 宮崎県総合農業試験場 荒砂英人

1 研究の背景

宮崎県及び鹿児島県の特産品である芋焼酎製造に必要な麹用米として、酒造業界から高い醸造適性と、低価格での安定供給に対する要望が高まっていた。しかし、焼酎醸造用米の研究は少なく、焼酎醸造適性はほぼ未解明であることや、自県産は少なく、全国から仕入れるなど麹用米の確保に大変苦慮していた。

2 研究の概要

芋焼酎の醸造に用いられる麹用米について、生産と利用両面にまたがる基本的知見を得ることにより、南九州地域の焼酎産業、水田農業の活性化に寄与することを目的として研究に取り組んだ。

3 研究期間中の主要な成果

  • 焼酎麹用米に求められる醸造適性について、高アミロース米は製麹操作性に優れることや、タンパク質含有率の高い米ほど香味成分が高くなることを明らかにした。
  • 醸造に適した安定多収栽培では、アミロース含有率の高い専用品種を用いることや、多肥栽培により米のタンパク質含有率を高めることが効果的であることを明らかにした。
  • 省力低コスト栽培体系の検討では、粒径の大きい専用品種において、高密度育苗技術の導入により27%の増収、6,209円/10aのコスト低減効果があることを明らかにした。

4 研究終了後の新たな研究成果

該当なし

5 公表した主な特許・品種・論文

田之頭拓、安藤義則他.高アミロース水稲品種「たからまさり」の焼酎醸造に適した安定多収のための栽培法.日本作物学会九州支部報86,11-14 (2020)

6 開発した技術・成果の実用化・普及の実績及び今後の展開

(1) 実用化・普及の実績

  • 高アミロース米「たからまさり」を使用した焼酎が発売された。売上推定約200万円/年(2020 年度)
  • 焼酎麹専用米の普及面積宮崎県「み系358」796ha、鹿児島県「たからまさり」10ha(2020年産)

(2) 実用化の達成要因

  • 酒造業界や生産現場のニーズの把握及び、醸造適性の解明や醸造に適した安定多収栽培といった目標設定が適切であった。研究においては、生産と利用の両面の知見を得ることができた。
  • 普及や農機メーカー、酒造業者、農家等と実証試験を行い研究成果と合わせ栽培マニュアルを整備した。

(3) 今後の開発・普及目標

宮崎県と鹿児島県では早期栽培向けの高アミロースの焼酎麹専用米を育成し、普及を図る。

7 開発した技術・成果が普及することによる波及効果及び国民生活への貢献

焼酎麹用米の安定供給や、専用品種を用いた新製品の開発が図られた。
水田営農において、焼酎麹用米が定着し、農業経営の安定・発展に寄与した。