生物系特定産業技術研究支援センター

(35) EOD技術による特産園芸産物の革新的な生産技術実証

事業名 攻めの農林水産業の実現に向けた革新的技術緊急展開事業
実施期間 平成26年~27年(2年間)
研究グループ
(研究終了当時)
鳥取大学、鳥取県園芸試験場、鳥取県農林水産部とっとり農業戦略課、(株)フジ電機
作成者 鳥取県 園芸試験場 岸本 真幸
連絡先 鳥取大学 田村 文男
電話 : 0857-31-5048
メール : tamura[アット]tottori-u.ac.jp ※[アット]を@に置き換えてください

1 研究の背景

冬季低日照地域では、太平洋側と同一の品目を栽培するにも多大な加温コストが必要で、経営を圧迫している。その対策として、EOD(End of day)処理(日没後短時間の昇温や、遠赤色(FR)光などを照射)が考案され、一部の花きでは低コスト効果が明らかになっている。しかし、実用的な照明器具が皆無に等しく、品目毎の光照射や温度条件など効果的な処理法が不明である。

2 研究の概要

EOD光照射の光源として用いる遠赤色(FR)光は、既存照明が1灯7千円以上と高価な上、照射範囲が限定的で100灯/10a以上必要であることから、面積当たりの光源コストを抑えたLED(FR)照明器具を開発する。

3 研究期間中の主要な成果

  • 開発した広照射LED(FR)照明(商品名:早咲きジオライト、L300×2灯タイプ、7.5W)は、白熱灯や既存のLED(FR)照明(9W)に比べて有効照射範囲が2倍以上と広く、照明器具の設置灯数を1/2以下に減らせる。
  • 単位面積当たりの光源コスト/寿命も既存LED(FR)照明の50%以下、白熱灯の25%。さらに電気代は、既存LED(FR)照明の50%以下、白熱灯の5%以下で生産者が導入しやすい仕様となった。
  • 本事業で得られた成果を基に「EOD栽培マニュアル」を作成し、低日照地域の公設試験場、普及センター等に送付して技術の普及に資した。
  • この技術導入によりストック、トルコギキョウ、イチゴの実証試験では所得率が30%程度向上すると試算された。

4 研究終了後の新たな研究成果

  • 高湿度環境下で早咲きジオライトの耐久性試験を行い、シーリング材等を改良して防水性能を向上させた。
  • 花壇苗の一部やアスターなど、赤色光を照射すると開花が早まる品目が明らかになった。これらに赤色光によるEOD光照射を行うと、栽培期間短縮や暖房コスト削減に繋がることが明らかになった。
  • この結果に基づいて、早咲きジオライト(赤色光)を商品化した。

5 開発した技術・成果の実用化・普及の実績及び今後の展開

(1) 実用化・普及の実績

平成30年12月末までの早咲きジオライト販売台数2,197台。価格12,960円/台。販売金額約2,850万円。

(2) 実用化の達成・普及の要因

  • 関係機関が頻繁に現地を巡回して情報交換を行い、技術精度の向上を目指した。さらに鳥取大学などによる技術支援があり、特許申請に繋がった。
  • 生産者や指導者向けの研修会を頻繁に開催し、野菜・花き普及指導員については研修を必修とした。
  • 県や町がEOD栽培の施設整備に関する補助事業を行い、普及の後押しをした。

(3) 今後の開発・普及目標

  • 様々な草種の開花促進、草丈伸長に対応するように 早咲きジオライトのシリーズ化を図る。
  • 今後鳥取県外でも依頼があれば積極的に出掛けて講演、指導、情報交換を行い、早咲きジオライトの利用技術精度を高める。

6 開発した技術・成果が普及することによる波及効果及び国民生活への貢献

早咲きジオライトの活用で、開花促進(ストック、トルコギキョウなど)、品質向上(ストック、トルコギキョウなど)、低コスト化(トルコギキョウ、イチゴなど)により、産地としての信用が高まり農業所得が向上する。

北部九州における稲麦大豆多収品種と省力栽培技術を基軸とする大規模水田高度輪作体系の実証