生物系特定産業技術研究支援センター

(50)革新的技術導入による水稲育苗ハウスを利用した省力低コスト果樹栽培の実証研究

事業名 攻めの農林水産業の実現に向けた革新的技術緊急展開事業
実施期間 平成26年~27年(2年間)
研究グループ
(研究終了当時)
新潟県農業総合研究所園芸研究センター、富山県農林水産総合技術センター果樹研究センター、石川県農林総合研究センター農業試験場砂丘地農業研究センター、農研機構果樹研究所、新潟大学農学部
作成者 新潟県農業総合研究所 園芸研究センター 根津 潔
連絡先 新潟県農業総合研究所 園芸研究センター 根津 潔
電話 : 0254-27-5555
メール : nezu.kiyoshi[アット]pref.niigata.lg.jp ※[アット]を@に置き換えてください

1 研究の背景

水稲育苗ハウスの周年利用が可能な果樹栽培の取り組みは北陸各県で増加してきているが、重粘土地帯や砂丘地等のこれまで果樹不適地とされた地域での導入でいくつかの課題が明らかとなっている。また、稲作経営体における園芸導入の動きは一層活発となっており、付加価値の高い果樹栽培への期待は高い。

2 研究の概要

開発したぶどうアーチ栽培といちじく養液コンテナ栽培は、通常通り水稲育苗を行いながら果樹栽培ができる技術である。ぶどうアーチ栽培では、省力器具の利用や摘心技術で省力化を図った。また、「シャインマスカット」の専用カラーチャートを作成し、収穫時等の着色の統一が可能となった。いちじく養液コンテナ栽培では、簡易で移動可能な栽培システムを試作し、適正な養液管理方法を確立して品質を向上させた。

3 研究期間中の主要な成果

  • 技術を取りまとめた新技術普及マニュアルとして「水稲育苗ハウスを利用した果樹栽培(ぶどうアーチ栽培編)(いちじく養液コンテナ栽培編)」を作成した。マニュアルでは稲作作業との労力競合が少なく、安定生産可能な技術体系として、大規模水田農業における果樹の複合営農の方向性を示すことができた。
  • 数理モデルに基づく「シャインマスカット」専用カラーチャートを試作した。従来品より適合度と評価精度が50%以上向上し、新潟県では「シャインマスカット」の出荷基準として活用されている。

4 研究終了後の新たな研究成果

なし

5 開発した技術・成果の実用化・普及の実績及び今後の展開

(1) 実用化・普及の実績

平成30年までにブドウの技術体系は新潟県67戸、富山県20戸、石川県3戸、青森県22戸での導入実績あり。山形県、福島県でも取り組みがあるが戸数は把握していない。石川県では花冠取り器の利用など部分技術が120戸で導入されている。また、新潟県では「シャインマスカット専用カラーチャート」を150戸で導入し、出荷基準として役立てている。イチジクの技術体系は新潟県11戸、富山県32戸で導入されている。

(2) 実用化の達成・普及の要因

北陸地域など水田農業を主体とする地域では、今後担い手への農地の集積が加速すると予想されており、大規模営農における経営安定化のため、水稲以外の品目導入が進められている。導入品目の中で果樹は収益性が高く注目されており、本技術によるブドウやイチジクの栽培体系は生産者ニーズにマッチしており、普及が進んだ要因と考えられる。

(3) 今後の開発・普及目標

近年、水稲大規模営農における経営安定化のため水稲以外の品目導入が進められており、特に収益性の高い果樹は高く注目されていることから、本技術によるブドウやイチジクの栽培体系に加え水田転換園等への果樹の大規模導入技術の開発・普及が目標となる。

6 開発した技術・成果が普及することによる波及効果及び国民生活への貢献

稲作法人等での新たな果樹品目の導入で、地域の活性化が図られる。また、雇用の増加が期待できるとともに、収益性の高い果樹品目の導入で、所得の向上が図られる。さらに高品質の国産果実の供給により需要拡大につながる。

北部九州における稲麦大豆多収品種と省力栽培技術を基軸とする大規模水田高度輪作体系の実証