生物系特定産業技術研究支援センター

(21001) 果樹の樹体ジョイント仕立てを核とした省力、低コスト栽培システムの開発

事業名 農林水産業・食品産業科学技術研究推進事業(実用技術開発ステージ)
実施期間 平成21年~25年(5年間)
研究グループ
(研究終了当時)
筑波大学、農研機構 果樹研究所、宮城県農業・園芸総合研究所、茨城県農業総合センター園芸研究所、群馬県農業技術センター、埼玉県農林総合研究センター園芸研究所、長野県果樹試験場、長野県南信農業試験場、愛知県農業総合試験場、鳥取県農林総合研究所,広島県立総合技術研究所農業技術センター、福岡県農業総合試験場、日鉄住金防蝕(株)、 (株)やまびこ、農業者 高橋 當侑
作成者 神奈川県農業技術センター 柴田 健一郎
連絡先 神奈川県農業技術センター 柴田 健一郎
電話 : 0463-58-0333
メール : shibata.z0m6[アット]pref.kanagawa.jp ※[アット]を@に置き換えてください

1 研究の背景

果樹産地では生産者の高齢化、後継者不足が深刻な問題であり、販売価格の低迷とも相まって危機的な状況に陥っている。果樹農業を若者にとって魅力ある産業とし、次世代の担い手を確保していくためには、栽培の核となる仕立て法を単純化し、栽培管理を大幅に省力化、簡易化することが重要である。

2 研究の概要

  • リンゴ、カキ等9樹種に「ジョイント仕立て※」を応用し、栽培管理を大幅に省力化、簡易化する。
  • カキ、ウメ等立木性樹種では低樹高化による省力、安全性の向上や生産性、果実品質の向上を図る。
  • ナシでは基幹品種の生産安定と新品種の導入促進を図る。

※樹と樹をつなげ樹形を形成する超早期成園化技術

3 研究期間中の主要な成果

  • ジョイント栽培によるナシ新品種、高品質品種の生産安定技術
  • カキ、ウメのジョイント仕立てによる早期成園、省力・安全、安定生産技術
  • スモモのジョイント仕立てによる早期成園、省力、結実安定技術

4 研究終了後の新たな研究成果

  • 自動走行車を活用したナシジョイント仕立ての収穫作業時間20%削減
  • 自動走行車とラジコン動噴を活用したナシ、カキジョイント仕立ての自動防除機の開発

公表した主な特許・品種・論文

  • 柴田健一郎.果樹のジョイント栽培における省力・軽労型生産技術.農業食料工学会誌77:402-406(2015).
  • 朝隈英昭.ジョイントV字トレリスにおけるカキ'太秋'の初期生育,初期収量および果実品質.園芸学研究15(2) : 171-177(2016).

5 開発した技術・成果の実用化・普及の実績及び今後の展開

(1) 実用化・普及の実績

  • ニホンナシのジョイント仕立て : 特許許諾33団体、普及面積約100ha
  • カキのジョイント仕立て : 導入農家数約50戸、普及面積約5ha
  • ウメのジョイント仕立て : 特許許諾22団体、普及面積約3ha、4,000本
  • スモモのジョイント仕立て : 導入農家数約25戸、普及面積約2ha
  • ジョイント仕立て用ナシ育苗技術 : 苗生産本数約6,000本/年

(2) 実用化の達成・普及の要因

果樹経営支援対策事業の活用により初期投資(苗等)が軽減され、さらに研究成果実用化事業等を活用し、普及組織が生産者の組織化を図り、大苗の共同育成や巡回検討会、技術研修会等を開催する中で、正確な技術(育苗法、接ぎ木法、初期の新梢管理、せん定法等)の伝達を行い、新技術を定着させた。

(3) 今後の開発・普及目標

ニホンナシのジョイント仕立ては2020年に150ha、その5年後に250haの普及を目指す。新たに栽培管理の自動化やロボット収穫を可能とするV字形のジョイント樹形を開発し、リンゴ、ニホンナシ、セイヨウナシ、カキ、モモ、オウトウの年間労働時間を大幅に削減する。

6 開発した技術・成果が普及することによる波及効果及び国民生活への貢献

果実生産における新たな機械化、自動化技術の開発や栽培の簡易化により労働生産性の向上や雇用労力の活用が促進されるとともに、改植の促進や新品種の導入促進により、持続的な国産果実の安定供給に貢献する。

北部九州における稲麦大豆多収品種と省力栽培技術を基軸とする大規模水田高度輪作体系の実証