生物系特定産業技術研究支援センター
(23010) 縞萎縮病に強く、麦芽の溶けが適正なビール大麦の育成
事業名 | 農林水産業・食品産業科学技術研究推進事業(実用技術開発ステージ) |
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実施期間 | 平成23年~25年(3年間) |
研究グループ (研究終了当時) |
栃木県農業試験場、福岡県農業総合試験場、サッポロビール(株)、アサヒビール(株)、農研機構作物研究所、栃木県経営技術課、福岡県経営技術支援課、久留米普及指導センター、京築普及指導センター |
作成者 | 栃木県農業試験場 加藤 常夫 |
連絡先 | 栃木県農業試験場 加藤 常夫 メール : nougyou-s[アット]pref.tochigi.lg.jp ※[アット]を@に置き換えてください |
1 研究の背景
生産側からはオオムギ縞萎縮病のウイルス系統分化に対する対応が、実需側からは麦芽の溶け過剰の改善が強く望まれていた。そこで、縞萎縮病抵抗性で麦芽の溶け※が適正なビール大麦品種の育成を目指した。
※ 溶け : 発芽中に起こるタンパク質、炭水化物等貯蔵物質の変化
2 研究の概要
農業特性と麦芽品質の優れる新品種を育成し、製麦特性の解明と共に、高品質安定生産栽培法の確立と栽培マニュアルの策定を行い、新品種の普及を支援する。
3 研究期間中の主要な成果
- オオムギ縞萎縮病の国内すべてのウイルス系統に抵抗性で、麦芽のタンパク質溶け(コールバッハ数)が適正且つ、β-グルカン溶けが速く優れる温暖地向けビール大麦「アスカゴールデン」を育成した。
- 「アスカゴールデン」の持つ穂数型の特性を生かした、やや薄播き且つ、やや少肥の高品質安定生産栽培法を確立した。
4 研究終了後の新たな研究成果
- 原麦リポキシゲナーゼ活性が無で、他の特性はサチホゴールデンとほぼ同等の早生多収で麦芽品質が優れる「ニューサチホゴールデン」を育成した。
- 「ニューサチホゴールデン」の多収性が発揮される、やや多肥の高品質安定栽培法を確立した。
公表した主な特許・品種・論文
- 品種登録出願26546 大麦品種アスカゴールデンを品種登録出願(H23年12月) (出願者名:栃木県)
- 大関美香他 ビール大麦(二条大麦)「アスカゴールデン」の育成. 栃木農試研報71, 1-25 (2013)
- 山口昌宏他 ビール大麦「アスカゴールデン」の高品質安定栽培法. 栃木農試研報73, 1-10 (2015)
5 開発した技術・成果の実用化・普及の実績及び今後の展開
(1) 実用化・普及の実績
アスカゴールデンは、2018年時点で栃木県、群馬県、岡山県においてビール大麦契約対象の指定品種に格付けされており、2018年産の作付面積は栃木県及び群馬県で1,428haである(比率は15.1%及び1.9%)。
(2) 実用化の達成・普及の要因
ビール会社による大規模製麦・醸造試験を実施し、醸造品質の実用性を最終評価した。その後は栽培マニュアルを活用するなど、研究、行政、普及、生産団体、実需等が一体となり、計画的に普及を推進した。
(3) 今後の開発・普及目標
当面(5年後)はアスカゴールデンの普及目標を2,000haとし、ニューサチホゴールデンとの共存を図る。その後は、アスカゴールデンの長所(溶け特性や縞萎縮病抵抗性)とニューサチホゴールデンの長所(原麦リポキシゲナーゼ欠損)を維持しつつ、気象変動に強く生産安定型の多収品種を開発し、順次切り替える。
6 開発した技術・成果が普及することによる波及効果及び国民生活への貢献
実需者ニーズに対応した高品質な国産ビール大麦の安定供給は、国産原料の信頼度アップと地位向上に繋がる。耐病性品種の普及・拡大は、農家の所得向上に直結し、我が国の農業の持続的発展に貢献する。