生物系特定産業技術研究支援センター

(23022) 地球温暖化の抑制と水質保全に資する地域資源管理技術の実証と導入促進

事業名 農林水産業・食品産業科学技術研究推進事業(実用技術開発ステージ)
実施期間 平成23年~25年(3年間)
研究グループ
(研究終了当時)
農研機構近畿中国四国農業研究センター、岡山大学、北海道立総研機構根釧農業試験場、秋田県農業試験場、愛知県農業総合試験場、北海道(農政部、根室農業改良普及センター)、秋田県秋田地域振興局
作成者 農研機構西日本農業研究センター 松森 堅治
連絡先 農研機構 西日本農業研究センター 企画部産学連携室
電話 : 084-923-5385
メール : www-warc[アット]naro.affrc.go.jp ※[アット]を@に置き換えてください

1 研究の背景

地球温暖化や未利用有機資源・肥料費の高騰・水質汚濁等の農業・環境問題は、喫緊の課題であり、包括的な対策が求められている。しかし、開発される対策技術の効果を包括的に評価できる手法がない。

2 研究の概要

地域の有機資源等を活用して生産費低減と温室効果ガス排出抑制や水質保全に貢献する複数の農地管理技術を開発、実証し、各技術の導入で変化する費用と環境保全効果を水質予測モデルやライフサイクルアセスメント(LCA)の手法により、慣行と比較して農家や普及担当者が選択できる技術メニューを提示した。

3 研究期間中の主要な成果

  • 根釧地域では、家畜ふん尿主体施肥法、土壌診断に基づく施肥設計等の施肥改善技術の導入により化学肥料使用額の節減と環境保全に貢献した。
  • 商用電源のない中小規模の農地でも低コストで利用可能なソーラーポンプを利用して日射量に応じて点滴灌水同時施肥を行う日射制御拍動かん水装置の環境保全効果を実証した。

4 研究終了後の新たな研究成果

  • 日射制御拍動かん水装置をもとに棚田転換畑等多段の小規模農地に低コストで自動かん水できる装置の改良、高齢・障がい者など多様な主体の農業参入を支援するブドウコンテナ栽培用の装置開発を行った。
  • 露地野菜栽培において、家畜ふん堆肥の連用効果を利用して施肥量を削減する技術を開発した。

公表した主な特許・品種・論文

  • 笠原賢明他.ブドウコンテナ栽培のための太陽電池駆動ポンプによる灌水装置の開発.近畿中国四国農業研究センター研究報告 16,1-12 (2016).
  • 辻正樹他.牛ふん堆肥を3年一括施用した露地野菜畑における野菜の収量と養分動態.愛知県農業総合試験場研究報告48, 91-99 (2016).

5 開発した技術・成果の実用化・普及の実績及び今後の展開

(1) 実用化・普及の実績

  • 日射制御拍動かん水装置は、果菜類を中心に2018年までに約800台が導入され、施肥量の削減によるコスト減と環境保全に加えて、灌水作業の軽労化、安定生産にも貢献した。
  • 飼料用トウモロコシに対する連用時の家畜ふん尿の肥効評価と施用上限量は、「北海道施肥ガイド2015」に反映され、根釧地域の化学肥料使用額の節減と施肥量削減による環境負荷の低減に貢献した。

(2) 実用化の達成・普及の要因

現地実証圃場において、普及機関や農家と連携して技術の利用上の問題点を洗い出し、改良とマニュアル作成を進め実用化につなげた。また、継続予算の獲得による展示圃と説明会開催が普及につながった。

(3) 今後の開発・普及目標

施肥量の削減や環境保全効果をさらに向上させる技術改良を行う。加えて、環境保全的な技術による農産物を消費者が選びやすくする技術として、窒素フットプリントなどの指標開発と普及が目標である。

6 開発した技術・成果が普及することによる波及効果及び国民生活への貢献

地域資源活用型農地管理技術の普及により、生産者は生産コスト低減と環境への効果を比較して導入技術を選択できるようになり、国民には水質保全や温室効果ガスの排出抑制など環境負荷の低減で貢献する。

北部九州における稲麦大豆多収品種と省力栽培技術を基軸とする大規模水田高度輪作体系の実証