生物系特定産業技術研究支援センター

(23025) 根部エンドファイト活用によるアスパラガス連作障害回避技術体系の開発

事業名 農林水産業・食品産業科学技術研究推進事業(実用技術開発ステージ)
実施期間 平成23年~25年(3年間)
研究グループ
(研究終了当時)
農研機構 野菜茶業研究所、同中央農業総合研究センター、北海道大学、茨城大学、パイオニアエコサイエンス(株)、福島県農業総合センター、佐賀県農業試験研究センター
作成者 佐賀県農業試験研究センター 田川 愛
連絡先 佐賀県農業試験研究センター 野菜・花き部 田川 愛
電話 : 0952-45-2143
メール : tagawa-ai[アット]pref.saga.lg.jp ※[アット]を@に置き換えてください

1 研究の背景

アスパラガスは多年生作物であり、栽培開始後一定の年次が経過すると、株の老化に伴い収量が減少して経済性が悪くなるため株を更新する必要が出てくる。その際、アスパラガスを栽培していた畑に新しい株を定植する(改植)と、アスパラガスを栽培していなかった畑に定植した場合(新植)に比べてしばしば生育・収量が劣ることが知られている。そのため、アスパラガスの連作障害回避技術体系の開発が望まれている。

2 研究の概要

佐賀県では、「アスパラガス連作障害回避のための湛水太陽熱処理効果の検証」を行った。

本処理は、1立枯病や株腐病等のフザリウム菌を太陽熱処理で死滅させること 2アスパラガスのアレロパシー(生育阻害)物質を湛水処理によりかけ流すこと 3長期間アスパラガスを栽培した土壌の化学性を湛水処理により是正すること の3点によりアスパラガスの連作障害を回避することを目的としている。アスパラガスを10年以上栽培している佐賀県内の農家3件の圃場で試験を実施した。

3 研究期間中の主要な成果

  • 湛水太陽熱処理により、土壌中(15-30cm深)の立枯病菌を含むフザリウム菌密度は、検出限界未満となることを明らかにした。
  • 湛水太陽熱処理により、土壌のアレロパシー活性が低下することを明らかにした。
  • 湛水太陽熱処理前と比較して処理後は土壌ECおよび硝酸態窒素濃度が低下することを明らかにした。
  • 湛水太陽熱処理後の土壌では、処理前の土壌に比べアスパラガス幼苗の地下部新鮮重が有意に大きくなり、生育阻害が緩和されることを明らかにした。
  • 湛水太陽熱処理後、改植したアスパラガスの収量は、新植の場合と同程度となることを明らかにした。

4 研究終了後の新たな研究成果

公表した主な特許・品種・論文

  • 田川愛他. アスパラガス連作障害回避のための太陽熱処理効果の検証. 園芸学研究 13(3),221-227 (2014).
  • 田川愛他. アスパラガス連作障害の対策技術『湛水太陽熱処理法』. 植物防疫 68巻11号,648-651 (2014).

5 開発した技術・成果の実用化・普及の実績及び今後の展開

(1) 実用化・普及の実績

佐賀県の技術成果は、九州を中心にした5つの県(佐賀、長崎、福岡、熊本、栃木)の12か所、面積の合計は185aで普及。

(2) 実用化の達成・普及の要因

アスパラガス改植マニュアルを農研機構のHPやアスパラガスネットHPで公開していただき、多くの人に技術を知ってもらうことができた。

(3) 今後の開発・普及目標

さらにたくさんの方に本技術を知っていただき、広く現場で活用していただきたい。

6 開発した技術・成果が普及することによる波及効果及び国民生活への貢献

アスパラガス産地の活性化は、国産アスパラガスの安定供給につながると考えられる。

北部九州における稲麦大豆多収品種と省力栽培技術を基軸とする大規模水田高度輪作体系の実証